「世界市場」を目指しVWゴルフを徹底マーク!

 このクラスのクルマは、世界でも最も激しい販売競争を要求されている。ターゲットはもちろん「世界市場」。その点をハッキリ示しているのがサイズ設定である。このクラスで「世界最強」はVWゴルフだが、ニュー・ファミリアは、全高を除くサイズが、ゴルフをわずかながら上回っている。これは結果としてそういう数字が出たという以上の意味を持っている。後発の有利性を最大限に生かして新技術を導入し、キメ細かい配慮を計算して誕生したのがニュー・ファミリアなのだ。

【ボクらの時代録】1980年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。マツダFFファミリア(BD1031/1051型)の光る先進性
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【ボクらの時代録】1980年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。マツダFFファミリア(BD1031/1051型)の光る先進性
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 スペース性は満点だ。キャビンは明るく開放的で、広々としている。前席のヘッドクリアランス、足元の空間も十分なゆとりがあり、圧迫感はまったくない。ドライビングポジションはFR車と同じようにまっすぐな姿勢が得られる。視界は前後左右ともによく、スラントノーズ部は前方がよく見通せるので、運転はしやすい。1500GXには開口面積の広い電動サンルーフが標準装備されている点もうれしい。明るい日差しを浴び、爽やかな外気に触れながら走る。それはまさにゴキゲンなフィーリングだ。

 エンジンは新開発。XGには1490ccユニットが積まれる。最高出力83㎰、最大トルクは12.3㎏mを誇り、軽い車体と相まって、十分な動力性能を実現している。5速ギアボックスのギアリングもパワーとよくマッチしており、加速性能、実用性能とも高いレベルに達している。最高出力回転数は5500rpmだが、6000rpmあたりまではパワーの下降はそう目立たない。またストレスを感じさせるような振動や騒音もない。時に6500rpmあたりまで引っ張っても、それなりについてきてくれる。

 サスペンションは前後ともストラット式による4輪独立。リアにはSS方式と呼ぶ、安定性を高める技術が投入された。ステアリング特性は、一般的なスピードレンジでは適度なアンダーステア。ラック&ピニオン式のステアリングは国産車としては高い剛性を持ち、ほどよいシャープさを生み出している。追い込んでいくにつれて、アンダーの度合いは高まっていくが、たとえ前輪が流れ出すにしても、決して唐突なものではない。不安感はないし、コントローラブルだ。
 ニュー・ファミリアは開発にあたって世界中のFF車を研究したという。その努力の成果は、至るところに表現されている。
(岡崎宏司/1980年8月号発表)

FFマツダ・ファミリア/プロフィール

 マツダの主力モデルであるファミリアは1980年6月にFFモデルに大変身。世界基準を先取りした意欲的な設計とスタイリッシュな造形が大好評を博し、当時経営面で苦戦していたマツダの業績回復に大いに貢献する。販売は絶好調。生産開始から18ヶ月で累計生産台数50万台の記録を達成。国内販売で常勝のトヨタ・カローラを破り販売トップに立ったことでも話題をさらった。

【ボクらの時代録】1980年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。マツダFFファミリア(BD1031/1051型)の光る先進性
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【ボクらの時代録】1980年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。マツダFFファミリア(BD1031/1051型)の光る先進性
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

FFファミリアは、デビュー当初は3ドアと5ドアのハッチバックだけだったが、1980年9月には独立したトランクを持つ4ドアサルーンを追加。販売主力モデルは3ドアHBのトップグレードとなる1.5リッター(85ps)のXG。XGはスライディングルーフ、ハロゲンランプ、70扁平ラジアル、ラウンジ形状リアシートなど快適装備をフル装備。欧州車フィールのスポーティな走り味と相まって、若者を中心とした幅広い年齢層のユーザーから支持を集めた。ちなみに1980年8月に3速ATがラインアップに加わったが、XGのトランスミッションは5速MTのみだった。ファミリアはその後1983年1月のマイナーチェンジでEGI(電子制御燃料噴射装置)、同6月にはターボを追加。1985年1月に次期型にバトンタッチする。