患者会の報告ではのべ7,551の症状が報告されており、1人あたり平均24の症状を抱えていた。頻度が高い症状は倦怠感、疲労感、集中力の低下、睡眠障害であった。特異な症状として、筆者の検討でも見られた脱毛が68人、舌苔が28人にみられた(図3)。

図3 コロナワクチン後遺症でみられる症状新型コロナワクチン後遺症患者の会提供
患者会の報告では、完治したのは4人(1.3%)に過ぎず、改善傾向の131人(40.9%)を加えても半数以下であった。89人(27.5%)については悪化傾向であった。
図4に、完治していない316人のうち症状の持続期間が判明した303人における症状の持続期間を示す。267(88.1%)は1年以上、35人(11.6%)は2年以上、症状が続いている。持続期間の判定は、2023年7月の時点なので、今後、更に延びることが予想される。

図4 コロナワクチン後遺症の持続期間新型コロナワクチン後遺症患者の会提供
研究班の報告と患者会の報告とでは、症状の頻度、持続期間、転帰に大きな違いがみられた。
研究班の報告では、ワクチン接種直後にみられる発熱、注射部位の痛み、頭痛などを含むのに対して、患者会の報告では、症状が接種後1カ月以上続く場合のみを取り上げたことによる。
研究班の症例の66%は、症状の持続期間が28日以内であるので、患者会の後遺症とする定義からは外れることになる。筆者の検討でも、ワクチン後遺症の特徴は症状が多彩であることであった。研究班の報告よりも、1カ月以上続いた症状を漏れなく記載した患者会の報告が、より、ワクチン後遺症の実態を反映していると考えられる。
研究班の報告書には79種類の確定病名が記載されていたが、そのうち2人以上の診断がある15種類の病名を示す(図5)。

図5 ワクチン接種後の症状に対する確定病名2023年7月28日開催第94回厚生科学審議会資料
予防接種後副反応、発熱、アナフィラキシー 、発疹、頭痛と続くが、医師の立場からすると、確定病名に発熱、発疹、頭痛を含んでいることに違和感がある。確定病名にはICD(国際疾病分類)-10コードが記載されているが、R00〜R99は症状、徴候および異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないものを示すコードで、病名ではない。発熱:R509、発疹:R21、頭痛:R51、など報告された79種類の病名のうち、21種類にはRコードが付けられていた。
アナフィラキシー はワクチン接種直後に発症する副反応であり、ワクチン後遺症に含むことに違和感がある。また、病名が痙攣重複発作と記載されていたが、重積発作の間違いかと思われる。重積という言葉は、一般には聞き慣れないかもしれないが、医師であれば間違えることはあり得ない。
医師から患者会会員が診断を受けた病名のうち、5人以上を含む病名を示す(図6)。

図6 コロナワクチン後遺症に対する診断名新型コロナワクチン後遺症患者の会提供
研究班の報告と異なり、症状は含まれていない。うつ病、自律神経失調症、パニック障害など心の病とする診断が多い。長期間続く多彩な症状に対して、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群、繊維筋痛症、体位性頻脈症候群(POTS)などの病名が付けられている。
関節リウマチ、甲状腺炎、シェーグレン症候群、血小板減少性紫斑病などの自己免疫疾患もみられる。多発性神経炎、散在性脳脊髄炎、ギランバレー症候群、顔面神経麻痺など、これまでもワクチン接種後副反応と知られている神経疾患が含まれている。帯状疱疹、口唇ヘルペス、カンジダ感染などは免疫能の低下を示唆しているかもしれない。比較的稀な病名としては、副腎機能低下(7人)、IgA腎症(6人)がある。
厚労省のホームページには、「研究班の調査結果に基づき、現時点ではワクチン後遺症として懸念を要するような特定の症状や疾病の報告の集中は見られず、転帰についても多くの事例で軽快または回復していることが確認された」と説明されているが、筆者の経験や患者会の報告とは大きな隔たりがある。
とりわけ研究班の報告は、ワクチン接種直後にみられた副反応を含んでおり、28日間以上症状が持続した症例は30人に過ぎない。新型コロナワクチン後遺症患者の会の報告を参考に、症例を増やして再検討すべきである。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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