第19節横浜FM戦で突かれた弱点

先述の湘南の悪癖が失点に直結したのが、1-4で敗れた第19節横浜F・マリノス戦の2失点目の場面だ。

ここでは湘南のMF中野嘉大(左ウイングバック)が自陣後方の大外のレーンでボールを保持したことで、横浜FMのDF松原健のプレスをもろに浴びてしまっている。縦へのパスコースを塞がれた中野は味方GKソン・ボムグンへのバックパスを選んだものの、この時点で横浜FM陣営にパスコースを消されており、湘南のビルドアップは窮屈に。GKソンは味方DF杉岡大暉(センターバック)にボールを渡そうとしたが、この横パスを相手FWヤン・マテウスに奪われ、FWアンデルソン・ロペスのゴールに繋げられてしまった。

センターバックの杉岡とウイングバックの中野が、ビルドアップの際に大外のレーンで共存してしまったことも、横浜FMのハイプレスの餌食となった原因と言える。湘南の今季の低迷の原因が浮き彫りとなった場面だった。

選手個々の技術力が高ければ、攻撃配置が雑でも相手チームのプレスを回避でき、ビルドアップも成立する。だが、2023シーズンのJ1リーグを見た限り、相手チームのプレスに対する湘南の選手たちの耐性は低く、選手個々の技術力で他クラブを上回っていたとは言い難い。GKや最終ラインから丁寧にパスを回そうとしているわりには、そのための配置が整っていない場面や試合が多かった。ビルドアップ時の選手配置を今季以上に突き詰めなければ、湘南は2024シーズンも残留争いに巻き込まれてしまうだろう。

浦和のDF酒井はタッチライン際から内側に絞り、複数のパスコースを確保。湘南を苦しめた

鈍かった相手の隊形変化への対応

2023シーズンのJ1リーグ33試合消化時点で、55失点。2022シーズンの失点数が39という事実を踏まえると、今季の湘南の守備は脆弱だったと言わざるを得ない。特に相手の隊形変化に弱く、ゆえに湘南の前線からの守備(ハイプレス)が通用しない試合があった。

第12節浦和レッズ戦では、基本布陣[4-2-3-1]の相手DF酒井宏樹(右サイドバック)がタッチライン際から内側に絞ってビルドアップに関わったことで、同選手への湘南のマークが曖昧に。第19節横浜FM戦でも、相手の右サイドバック松原が同様の立ち方でビルドアップに関わり、湘南に守備の的を絞らせなかった。

柏レイソルvs湘南ベルマーレ(J1第20節)先発メンバー

第20節柏レイソル戦では、基本布陣[4-2-3-1]の相手MF椎橋慧也が古賀太陽とジエゴの両DF間(センターバックとサイドバックの間)へ降り、ビルドアップを司る。同選手へのプレスが遅れたことで、湘南は前半27分に先制ゴールを奪われている(得点者はFW細谷真大)。自陣ゴール前での守備以前に、相手の隊形変化に即したプレスのかけ方をチーム内で共有しきれていなかった。


湘南ベルマーレ 山口智監督 写真:Getty Images