
ディアマンテ01欧州アッパーミドルの存在感。ハンサムで上質
ディアマンテの第一印象は「骨太、硬質」である。全長×全幅×全高は4775×1775×1410mm。メルセデス・ベンツのミディアムやBMW5シリーズといったヨーロッパのアッパークラスに近い基本体型が、ディアマンテにこれまでの2リッターセダンと決定的に異なる印象を与えている。4ドアHTを意識した低いキャビンというパッケージは、国産セダンの定石なのだが、やはり全幅のゆとりが効果を上げているのだろう。せせこましさは、見事に払拭され、のびのびとした躍動感と力強さを感じるプロポーションである。
インテリアは広い。こちらも全幅のゆとりが豊かなくつろぎを与えている。4名の大人が長時間、ゆったりと乗っていられるサイズだ。一人一人のスペースは飛行機ならビジネスクラス並みだろう。ディアマンテに乗ると、フロアの低い位置にヒップを落として、背中を寝かせぎみに、足を前に伸ばすようになる。これがディアマンテの基本的な着座ポジション設定だ。この姿勢は、あくまで 「乗客」としての安楽姿勢。運転席では違和感を感じる。アップライトが好みだと、主要スイッチのコントロール性を含め、しっくりこないに違いない。


パワートレーンはバンク角60度のV6で、2.5リッターと3リッターは、ツインカム24Vの可変吸気機構付きになる。3リッター(210ps/27.5kgm)は中低速に十分なトルク感があり、スムーズに滑らかに回る。とくに4500rpmくらいまでの通常の運転モードでは、ATの変速感を含め、しっとりとした走行フィーリングが味わえる。
注目の2.5リッター(175ps/22.6kgm)は、アクセルを踏んで積極的に走るシーンではなかなかいい。しかし常用域の低中速トルクは、パンチ不足の印象がある。3500rpmまでの加速感はモタつきぎみだ。ATのシフトショックも全域で3リッターより強く現れる。
シャシーは、まるで三菱のハイテク技術の展示場だ。走行フィールには、がっしりとしたクルマ全体の厚みを感じる。しっとり重めのステアリング、スムーズな発進感、フラットな乗り心地、静粛性、ボディの剛性感、シートの座り心地、インパネの造形など、見て触れて五感のすべてで受ける感覚が心地よく、まるで欧州高級車のような感覚が味わえる。ただし走行スピードが上昇するほど、欠点が顔を出しはじめる。この点は改善が必要だろう。 (1990年7月26日号発表)
1990年三菱ディアマンテ/プロフィール
ディアマンテは1990年5月、三菱初の3ナンバー専用車としてデビュー。1989年4月の消費税導入を機に3ナンバー車の自動車税がリーズナブルになったことも影響し、メーカー予想の月販3500台の予想を大きく上回る人気を獲得した。ボディサイズは全長×全幅×全高4740×1775×1400〜1420mm。競合するトヨタ・マーク2の3ナンバー車は5ナンバーボディの拡幅車だったが、ディアマンテはゼロから3ナンバー車として開発。それだけに欧州車と同等の堂々としたたたずまいが魅力だった。


エンジンは3リッター(210ps)/2.5リッター(175ps)/2リッター(125ps)の3種。すべてがV6レイアウトで3リッターと2.5リッター仕様は新開発DOHC24V。ディアマンテは三菱の作品らしく先進技術の導入にも積極的だった。駆動方式はフルタイム4WDとFF。一部グレードにはトラクションコントロールや電子制御アクティブサスペンションが組み込まれていた。最適な運転ポジションに自動的に導くMICS(三菱インテリジェントコクピットシステム)など、アメニティ装備も充実していた。ボディタイプは4ドアピラードHT。セダンは1990年10月にシグマとしてデビューした。