家庭料理の調味料として便利かつ定番で、多くの家庭の台所に常備されている市販の「白だし」が今、なぜか批判の的になっている。その理由は「食品添加物が多量に使われている」「原材料の『たんぱく加水分解物』や『●●エキス』はヒトの味覚を狂わせる』といったものだが、一部専門家からは「危険性を示す根拠が存在しない」「『白だし』を使ってもまったく問題ない」といった反論も聞かれる。そこで今回は「白だしは使ってはいけない説」を検証してみたい。

 煮物や和え物、鍋物などに便利な白だし。スーパーの調味料コーナーには豊富な種類の白だしが並んでいるが、そんな白だしをめぐって「体に悪い」「使ってはいけない」という声が今、広まっているのだ。その理由を整理すると概ね以下の2点となる。

・原材料として食品添加物がたくさん使用されている。またはキャリオーバー(※)の可能性がある。

・「たんぱく加水分解物」や「こんぶエキス」「かつおエキス」「しいたけエキス」などの「●●エキス」といった調味料がヒトの味覚を狂わせる恐れがある。

※キャリーオーバー
 食品の原材料の製造・加工で使用されたもので、その食品の製造には使用されない食品添加物で、最終食品まで持ち越された場合に、最終食品中では微量となって、食品添加物そのものの効果を示さない場合のことを指す。

 そこでまず大手メーカーが販売している白だしの原材料表示をみてみると、以下のようになっている。

●A社の商品
 食塩、しょうゆ(本醸造)(小麦・大豆を含む)、砂糖、濃縮鶏がらだし、濃縮だし(こんぶ、かつおぶし)、たんぱく加水分解物(小麦・ゼラチンを含む)、こんぶエキス、粗砕かつおぶし、粗砕そうだがつおぶし、酵母エキス(大豆を含む)/調味料(アミノ酸等)、アルコール

●B社の商品
 食塩(国内製造)、たん白加水分解物(大豆を含む)、ふし(かつお、そうだかつお)、米発酵調味料、砂糖、しょうゆ(小麦を含む)、還元水飴、かつおぶしエキス、魚介エキス、醸造酢、酵母エキス / 調味料(アミノ酸等)、アルコール

●C社の商品
 しょうゆ(国内製造)、食塩、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、昆布エキス、さば節エキス、かつお節エキス、昆布、 かつお節(粗砕)、醸造酢、発酵調味料、煮干エキス、マッシュルームだし、魚介たんぱく加水分解物/調味料(アミノ酸等)、アルコール、(一部に小麦・さば・大豆を含む)

●D社の商品
 しょうゆ(大豆・小麦を含む)(国内製造)、食塩、砂糖、節(かつお、いわし、まぐろ、そうだかつお)、かつお節エキス、小麦発酵調味液、かつおエキス、みりん、酵母エキス/調味料(アミノ酸等)、アルコール、酸味料

専門家「使用しても問題ありません」

 上記4商品のなかで食品添加物は調味料(アミノ酸等)、アルコール、酸味料となり、また添加物としてよく知られているものとしては甘味料や香料などが挙げられるが、これらを摂取することは体に悪い影響を与えるのだろうか。東京都立衛生研究所(現・東京都健康・安全研究センター)で長年にわたり「食の安全」について調査・研究を行ってきた実践女子大学名誉教授の西島基弘氏はいう。

「いずれの食品添加物も、食品安全委員会で安全性を確認し、それをもとに厚生労働省が使用を許可しています。よって、使用してもまったく問題ありません。いずれも人体に影響するほど使いすぎれば、味が変わり食べられませんが、使用量は微量ですので人体に影響はありません。

 また、キャリーオーバーの件もまったく問題ありません。加工助剤(※)、キャリーオーバーまたは栄養強化の目的で使用されるものについては、食品添加物の表示を省略することができます。たとえばプロセスチーズ製造時に炭酸水素ナトリウム(重曹)を用いたとしても、加熱融解の工程で大部分が分解してしまい最終食品への残存はごく微量になる場合には加工助剤に該当します」

※加工助剤
 食品の加工の際に使用されるが、(1)完成前に除去されるもの、(2)その食品に通常含まれる成分に変えられ、その量を明らかに増加されるものではないもの、(3)食品に含まれる量が少なく、その成分による影響を食品に及ぼさないもの。

 では、「たんぱく加水分解物」や「●●エキス」といった調味料がヒトの味覚を狂わせる恐れがあるという指摘はどうか。

「そうした指摘には根拠がありません。タンパク質を分解するとアミノ酸になりますので、危険性はありません。また、たとえば『こんぶエキス』は『こんぶ』のエキスなので危険性はまったくありません」(西島氏)