
イタリアのメロニ首相
イタリアは日本と同じように首相が頻繁に代わる国だ。平均すると一人の首相の寿命は1年と少々しかないという。最近でも2011年から現在まで7人の首相で8回の内閣が誕生している。
1.マリオ・モンティ、2.エンリコ・レタ、3.マテオ・レンツィ、4.パオロ・ジェンティロニ、5.ジュセッペ・コンテ、6.マリオ・ドゥラギ、7.ジオルジア・メロニの7人の首相が誕生。ジェセッペ・コンテが1次と2次の内閣を誕生させたが、他の首相は7人目メロニ現首相を除いて1次内閣だけであった。
しかも、2、3、4の3人の首相は総選挙をせずして首相になっている。政党間の争いや一つの党内での内紛からこのような現象が起きるのである。
しかし、これだけ首相が頻繁に入れ替わると、一人の首相の寿命は1年と少々でしかな。そうなると、一人の首相の任期中に国家プランを設計して実行に移すことは不可能である。それが戦後のイタリアの成長を妨げている。これは最近の日本の政治と良く似ている。
この現象を避ける為にイタリアで再燃しているのが、首相を有権者が直接選ぶ公選制だ。日本では故人となった中曽根元首相が首相の公選制の必要性を説いていた。
メロニ現首相はそれを法案として検討を開始した。首相の任期を5年とし、安定政権を維持すべく公選された首相に55%の議席が帯同するというものである。
更に、この改正案では仮に首相が任期中に辞任した場合の後任は与党議員から選出されるというのが義務となっている。それでも後任者が見つからない場合には大統領が議会を解散して総選挙を決定することができるとしている。
この改正案を実施するには憲法の改正が必要であるが、その承認には3分の2の議席の賛成が必要で、それが達成されない場合は国民投票ということになる。
この改正案の中には、議会の解散権を首相の一任によるものとするという案件も含まれている。現在、議会の解散権は大統領が持っており、また首相の指名権ももっている。この改正案が可決した場合はこの二つの権利が大統領の手から首相に委ねられることになる。
尚、仮にこの改正案が承認されても、それが実施されるのはマッタレッラ大統領の任期が終了する2029年となる。