しかし、金融庁も含めた金融界の人の多くは、金融庁の意図を十分に理解したとしても、そもそも、どれほどの人が国益への貢献を目的に国家公務員になったのか、金融機関に勤めている人は顧客のために働くという意思をもっているのか、あるいは、もっていたのか、内心の疑義を感じたに違いない。
そもそも、人は、組織のために働くものであろうか、あるいは、国民や顧客のために働くものであろうか。一般に、企業に勤める人は、企業のために働くという意思のもとに、あるいは、顧客のために働くという意思のもとに、企業で働いているのであろうか。むしろ、素直に考えれば、人は誰しも自分のために働くのではないのか。
実は、人は誰しも自分のために働く、そのことを前提とするからこそ、企業や官庁のような組織が必要になるのである。組織とは、人は自分のために働くことを前提とし、その働きの集積が全体として社会的付加価値を創造できるように、構成員の働き方を動機づける体系である。いうまでもなく、組織が必要なのは、各自が勝手に自分のために働くよりも、組織を通じて働くほうが創造される付加価値が大きくなるからで、これが分業の原理である。
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森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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