新型コロナウイルスは人々の移動や消費を制限し、さまざまな業界に大打撃を与えている。「コロナ倒産」も目立つ中で、絶好調な企業がある。任天堂やヤマトホールディングスだ。この記事ではコロナ禍でも業績が良い企業に焦点を当て、その理由を探る。
新型コロナウイルスが経済に与えた影響
新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの消費者の移動が制限されるようになった。これによって航空会社や鉄道会社などは、軒並み赤字に転落してしまった。
移動が制限されるということは、移動先での消費活動も減るということだ。居酒屋やバーなどの飲食店のほか、ショッピングセンターや遊園地、フィットネスクラブなども大きな影響を受けた。
さまざまな行事も延期・中止されたため、エンターテインメント業界や音楽業界も厳しい状況だ。結婚式の延期も増え、結婚式場の運営企業からも悲鳴が上がっている。
Withコロナ期において業績が好調な企業
このような状況の中、マスクや医薬品などを取り扱う業界以外でも、業績が好調な企業がある。「Withコロナ(ウィズコロナ)期」における需要の取り込みに成功した企業たちだ。
任天堂――「巣ごもり需要」を追い風にゲーム機・ソフトの販売増
コロナ禍が追い風になった企業の代表格といえば、ゲーム大手の任天堂だろう。「巣ごもり需要」によって同社のゲーム機「ニンテンドースイッチ」などの売上が伸び、アバターを通じて他の人と交流するゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」も爆発的人気となった。
その結果、2021年3月期第2四半期の連結業績(2020年4~9月)は
- 売上高が前年同期比73.3%増の7,695億2,400万円
- 純利益が同243.6%増の2,131億2,300万円
と大幅に伸びた。通期でも売上高は1兆4,000億円、純利益は3,000億円に着地する見通しとなっている。
シマノ――「密」を避ける自転車需要の増加で業績好調
シマノは自転車部品を製造し、日本だけでなく海外でも販売している大阪の企業だ。新型コロナウイルスの感染を防ぐため、電車やバスでの「密」を避けようとする人が世界的に増え、自転車の需要が拡大したことによって自転車部品の販売も伸びた。
この結果、2020年12月期第3四半期の連結業績(2020年1~9月)の最終損益は前年同期比10.4%増の472億3,100万円となり、通期では前期比24.1%増の643億円まで伸びる見通しだ。
ヤマトホールディングス――経常利益が前年同期比923.0%増に
新型コロナウイルスの影響で外出が減っても、食料品などを含む生活必需品の需要はなくならない。そんな中、宅配サービスを提供する企業の活況が目立つ。業界大手のヤマトホールディングスは、その筆頭だ。
2021年3月期第2四半期の連結業績(2020年4~9月)は、
- 営業利益が前年同期比333.2%増の269億1,500万円
- 経常利益が同923.0%増の279億3,300万円
最終損益は前年同期の赤字から黒字に転換し、141億8,600万円で着地している。
日清食品ホールディングス――即席麺の需要が伸びて業績が好調
食品業界の中では、即席麺や調味料などを扱うメーカーの業績が好調。外出自粛ムードの中、お湯を沸かせばすぐに食べられるカップ麺や袋麺の需要が伸びたほか、自宅で料理をする機会が増えたことで、消費者が調味料をより多く使うようになったからだ。
例えば、即席麺大手の日清食品ホールディングスの2021年3月期第2四半期の連結業績(2020年4~9月)は、売上収益が前年同期比8.9%増の2,411億3,100万円、純利益は同63.1%増の219億7,300万円となっている。
家電メーカーやテレワーク機器を扱う企業にも追い風
ゲーム大手の任天堂、自転車部品大手のシマノ、宅配大手のヤマト、即席麺大手の日清食品といった企業の業績が好調だが、その他の業界でも業績を伸ばしている企業がある。
例えば家電メーカーでは、ソニーやパナソニックが好調だ。自宅にいる時間が長くなった分、消費者が白物家電によりお金を使うようになったのだ。このように、家電メーカーも巣ごもり需要の恩恵を受けている。
また、企業がリモートワークを導入するようになったことで、テレワークのための機器を取り扱う企業や、省人化システムを提供する企業にも追い風が吹いている。
新型コロナウイルスで業績が悪化するセクターもあれば、伸びるセクターもある。新型コロナウイルスはマクロ的に見れば経済全体に大きなダメージを与えているが、中には業績を伸ばしている企業もあることがわかる。
そこに、投資で利益を得るチャンスがあるといえるのではないだろうか。
執筆・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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