常に成長できる環境を最優先してきた
「年齢を重ねていくと、守るべきものや捨てられないことが多くなります。たとえば子どもの環境では、転校だったり所属するサッカーチームの移籍だったり。守らないといけないものはあるけれど、背景を全部背負うとサッカー選手としての決断ができなくなってしまいます。最優先は、プロサッカー選手として1番成長できる場所はどこなのかということ。それを優先して決断できるのは家族に理解してもらっていて、僕の決断を第一に考えてくれているからです。年齢とともに背景が増えて決断ができなくなりつつあるところを、あえて捨てて決断することを心がけています。
丹羽家の考え方の軸として『ずっと家族で一緒に住むこと』があります。子どもは4人いて、サッカーしている1番上の息子は現在12歳。彼は福岡で生まれて、大阪や広島でサッカーをして新しい友達ができて、広島からすぐ東京のチームに行き、また東京からスペインのチームに一緒に移籍してきました。息子自身も移籍を繰り返しています。今では環境が変わることに免疫が付いて『また友達がいなくなっちゃう』ではなくて『また新しい友達と出会える』という感覚で思ってくれています。
サッカー選手は必要とされる場所で、必要とされるだけの評価をもらってプレーするのが1番大事です。できるだけ個人的な理由でキャンセルしたくありません。東京からスペインに来た当時は35歳で3人の子どもがいました。普通であれば、家族がどうなるかを考えて(海外に)行かない理由がかなり見当たると思います。でも僕は環境を変えて、もう1回プレーヤーとして勝負することを目的として来ました。これまで移籍先を決める際は、クラブの社長と強化部長、監督を含めてちゃんと話をして、最終的には自分のフィーリングが合うかを大切にしてきています。どういった環境に行けば成長できるかを常に考えて、残留するのか、移籍するのかを考えてきました。そこはずっとブレていません。
『サッカー選手の評価って結局お金でしょ?』と言われるけれど、僕の考えは全然違います。もちろんお金も大切で、お金がないと生活できないし家族も養えません。だけどそれ以上に大事なものがあり、お金での評価を第一の目的として考えるのは、僕は違うかなと思っています。自分の成長や貢献が最終的にお金にも繋がっていくと考えていて、優先順位は間違えたくない。優先順位は自分の成長。そのあとに評価です。
スペインに来て感じているのは、移籍に対して日本よりもポジティブということ。日本人選手もどんどん海外移籍するようになったり、どんどん移籍を繰り返したりするようになっているけれど、まだ移籍に対してネガティブな考えや抵抗感があります。もっと移籍に流動的になりポジティブに考えていけば、日本サッカー界のレベルもより上がると思っています」