世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が解散命令請求を受けたが、岸田首相の側近の中には「もう少し、冷静に対応すべきだ」「解散命令請求ができる要件を満たしていない」といった声もあったが、岸田首相は「解散請求しなければ、世論が許さない」と答えたという。非常に正直な答えだが、同首相が事の是非を冷静に考えて判断する政治家ではなく、世論に動かされる首相であることを実証している。

宗教法人法上の解散命令の要件となっている「法令違反」は本来、刑罰法令の違反に限られ、民法上の不法行為は含まれないにもかかわらず、首相は世論の圧力に屈して、その法解釈を書き直した。

朝日新聞など左派メディアでは旧統一教会批判が氾濫し、同教会は反社会的団体といったイメージが拡散されていった。その行先が教会の解散命令請求だ。それを拒否すれば、朝日などの左派メディアが一斉に岸田降ろしを始めるだろう。岸田首相にとって旧統一教会の将来などはどうでもいい、自身の政治基盤を堅持することが最優先だ。それを支えるのが「世論」というわけだ。

日本から旧統一教会に対して解散命令請求が出たというニュースが届いた時、40年あまり、ローマ・カトリック教会をフォローしてきた当方は、「それではカトリック教会はなぜ解散されないのか」と不思議に思った。

旧統一教会への批判は主に高額献金問題だが、カトリック教会の場合、未成年者への性的虐待問題だ。前者は民事関連だが、後者は刑法問題だ。そしてその件数は数万件に及ぶ。にも拘わらず、前者は高額献金という問題で解散命令請求を受け、後者は聖職者の性犯罪を隠蔽してきたにもかかわらず解散命令請求を受けていないのだ。高額献金問題ならば、キリスト教会だけではなく、仏教など全ての宗教団体が抱えている問題だ。高額献金した後、信仰を失ったために、その献金を返してほしいという元信者たちの要求だ。

旧統一教会への解散命令請求の件をフォローしていると、「世論」が如何に大きな影響を有しているかを改めて知ることが出来る、そして一旦「世論」が生まれてくると、それを覆すことは至難の業だ。「世論」はこの世の神だ。岸田首相は、地上で全能全知のパワーを有する「この世の神」に自身の政治生命を委ねてしまったのだ。首相本人にとっても、日本の行方にとっても、大きな躓きとなってしまった。

maroke/iStock

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年11月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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