岸田首相が増税メガネと言われているのは財務省の意向もあるかもしれませんが、長期的に見て現状の日本の維持が徐々に困難になることが予見される中、人口が増えないなら予算的措置を増やすしかないという見方があるのだろうと考えています。(一部の識者が日本には潤沢な資産があるとの指摘がありますが、今は年次収支(PL)と貸借対照表(BS)は混ぜ合わせないでPLだけで見る前提で考えています。)よって冷静に考えるなら日本は長期に渡って税金は上がることはあっても下がることはない、と考えるべきなのでしょう。
では一般物価です。労働力を削減できる業種は業態に劇的変化を伴いながら価格を維持する一方、削減できない業種では極めて大きなコスト増が見込まれるとみています。
例えば激変対応ができる業種として飲食店があります。サラリーマンのランチは定食屋や蕎麦屋で座って食べる時代からテイクアウトオンリーになり、店でサービスする業態は高級店化して二極化するとみています。例えば吉野家がテイクアウト専門店を25年2月までに今の5倍の160店舗にすると発表しています。理由はテイクアウト店は人材が少なく、場所も狭くて済むため利益率が圧倒的に高いからです。
一方、建設業は輸入資材のコストの高騰の上に建設労働者が減っていることから戸建て住宅でこの数年で1-2割値上がりしています。個人的にはこの価格上昇は今後、加速度的になり不動産価格全般が更に上昇してくるとみています。当然、市場から振り落とされる潜在購入者は賃貸市場に廻るわけですが、その賃貸価格は都心部でこの半年だけで10%上昇しています。理由はコロナによる脱東京から、人材不足で好条件の仕事が多い都心への回帰が明白となっているからです。
1-2年前までは日本の物価は世界と比べ、相当安いとされてきました。もちろん為替水準が円安過ぎることもあります。が、そもそも日本企業は企業努力で価格上昇を抑えてきた歴史が大きかったと思います。それがいよいよ物理的に不可能になってきたということかと思います。では円高になるのか、といえば短期的動きはともかく数十年単位の超長期で見ると円安になる公算はあります。理由は国力の問題です。財政が維持できなければ国際的な評価は下がるのです。そうなると利上げをしても通貨安は止まらず、物価は上がり続けるという悪循環、いわゆるアルゼンチン化が起きることもあり得るのです。
もちろん極端な例えではありますが、少子化と物価高は切り離して考えられなくなってきたともいえそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年11月20日の記事より転載させていただきました。
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