「夢はありますか?」というやり取りは10代までの若者や子供向けの話だと思ってはいけません。何歳になっても夢や希望はあるべきなのですが、社会人のレールに乗るとどうしても数十年に渡る社会人という長距離走を走らなくてはいけません。すると22歳前後で就職したら次の節目である定年後まで大きな変化はないという方が主流だろうと思います。

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もちろん、社会人生活に変化がないなどとは言いません。昇格や転勤、出向、新しい任務や業務など同じ組織内でも人事異動を通じて活性化と緊張感を高めるためにシャッフルを繰り返します。

私も会社員から自営業に変わったとはいえ、同じ枠組みの長距離走を皆さんと一緒に走っています。紆余曲折はありましたが、基本的には「稼ぐ仕事」という点では組織が変われども今でも継続していると言えます。ある意味、変わらない自分がそこにいて、生涯現役などと言っているのはもしかすると変化からの逃避なのかもしれません。

夢というのは叶うか叶わないかわからないけれど手が届かないほど向こうにある自分にとっての理想であり、一定年齢の方には桃源郷ということかと思います。

私は若い頃、夢が多かったと思います。外交官になりたくて勉強をしていた時、海外大学への留学を考えたこともあります。これは目標達成の手段でした。留学後すると自分のやりたいことや目標がうっすらと見えてくる人もいます。海外に留学すれば全く知らない世界ゆえに日本にいた時とはまるで違う世界を知り、人や社会と接することで自分の知見の狭さに驚き、開眼するといった話はよくある話です。

自分の照準をどんどん変えていくのは発見に伴う進化であり、私は素晴らしいことだと思います。

では定年を迎えるような年齢の方に「夢は?」と聞いたらどうでしょうか?「もうジャンプできない」「挑戦する勇気なんてとてもとても」と仰る方が多いかと思います。人は変われるか、といえば「そういう人もいるけれどほとんどいないよね」で多くの人は楽で安泰な方向に進みます。「40年以上働いた自分への褒美」というわけです。