5代目は伸びやかな3ナンバーボディで登場
5代目アコードはアメリカンサイズで登場した。全長は5ナンバー枠の4670mmだが、全幅は1765mmとワイド。この幅のメリットは、ウエストラインから下のグラマラスな造形にはっきりと出ている。
しかし日本の道路事情、駐車場事情といったことを考えると、この幅は少しばかり大きいといわざるを得ない。ちなみにアコードは、アメリカでは文句なしのベストセラーカーである。販売台数も日本とは比較にならないほど上回っている。このところアメリカンビッグ3(GM、フォード、クライスラー)の送り出すクルマは、価格や品質といった点で強い競争力を持ちはじめた。そんな状況の中で、アコードがいままでと同様のポジションをキープし続けるのは容易ではない。だから、サイズの問題ひとつをとっても、アメリカ市場をまず優先しなければならないのは当然の判断なのである。


キャビンは広くゆったりとしている。フロントウィンドウはワイドで、パノラミックな視界の広がりは気持ちがいい。ホンダ車らしい味わいが十分に感じられ、仕上げも良好。ただしフロントシートの作り込みは、いまひとつ。サイズと形状はいいが、クッションストロークと面圧分布がよくない。小一時間で少しお尻が痛くなってしまった。
試乗のメインは、2.2リッターの4気筒シングルカム16V・VTECを積む2.2VTEである。出力/トルクは145ps/5500rpm、20.2kgm/4500rpmをマークする。このエンジンは、どんなシュチュエーションでも必要にして十分な力を発揮する。ATもそんなエンジンの力をうまく引き出している。とてもリラックスできるいい感じの走り味だ。静粛性も高く、燃費も優秀。トータルに見てバランスがとれている。
乗り心地も、多くのユーザーが満足するレベルに達している。もう少しゆったり感が欲しい気もするが、なかなか快適である。ハンドリングは、日常域ではシャープでもないしダルでもない。ほとんどなんの意識もしないで運転できる。ただしタックインは少々目立つ。これは要改良ポイントである。
最後に2.2リッターツインカムVTECを積んだSiRグレードに触れておこう。パフォーマンスもハンドリング/安定性もハイレベルだった。新型アコードは「都会派の大人のためのプライベートサルーン」といったイメージに仕上げられている。
(岡崎宏司/1993年10月26日号発表)
1993年ホンダ・アコード/プロフィール
5代目は1993年9月に伸びやかな3ナンバーボディで登場。そのサイズは賛否が分かれたものの、スタイリッシュな造形と、衝突安全性と環境対策に積極的に取り組む姿勢は大いに評価された。中でも安全性の追求はライバルを大きくリード。センターピラーとサイドシルの形状見直しと肉厚化、ドア内部には側面衝突からパッセンジャーを守るビームが入れられていた。エアバッグはオプションで装着が可能だった。メインボディはセダンとワゴン。1994年2月にラインアップに加わったワゴンは先代と同様に米国工場生産車で、日本では輸入車として販売された。少数が販売されたクーペ(1996年7月導入)もアメリカ工場製だった。


パワーユニットは1.8リッター(125ps)/2リッター(135ps)/2.2リッター(145ps)のSOHCと、2.2リッターのDOHC(190ps)の4種。2.2リッター・SOHCにはパワーと燃費経済性を両立させた新世代VTEC機構を採用。全域で豊かなパワーと10モードで13.0km/リッター(VTL)という優れた燃費を実現。駆動方式は全車FFだった。5代目アコードは、従来は高級車の象徴だった3ナンバーボディを、フレンドリーに楽しめるキャラクターへと変換したエポックモデルといえた。