チャート:食品関連、肉・魚・卵以外は全て鈍化傾向
(出所:Street Insights)
6.8%を占めるエネルギーは前年同月比で4.5%低下し8カ月連続でマイナス、前月の0.5%から下げ幅を拡大しました。ガソリンは同5.0%低下し8カ月ぶりにプラスに転じた前月の3.0%からマイナスへ戻したほか、公益(電力・ガス)も同2.2%の低下と、前月から下げ幅を縮めつつ5カ月連続でマイナスだった。
チャート:ガソリンがマイナス圏へ戻し、食費や家賃も鈍化続く
(作成:My Big Apple NY)
アトランタ連銀が発表する粘着CPI(帰属家賃や外食、医療サービスなど、変動の鈍い品目に絞って算出したCPI)は前年同月比5.0%(小数点第2位なら4.95%)の上昇と前月の5.1%を下回り、2022年4月以来の5%割れに接近しました。住宅を除いた場合に至っては3.3%と前月と変わらずながら、2021年9月以来の3%割れにジワリ接近。パウエルFRB議長を始めFedは住宅を除くコアサービスに注目するなか、ゆるやかながら進展がみられた格好です。
チャート:粘着CPI、住宅を除けば減速が鮮明
(出所:Street Insights)
チャート:住宅関連のCPIは、前年同月比で鈍化トレンドを確認
(出所:Street Insights)
CPIのヘッドラインの前年同月比で鈍化するなか、実質の平均時給はプラス圏を確保しました。実質平均時給は前年同月比0.8%上昇し前月の0.5%から加速、6カ月連続でプラスに。ただし、2021年3月以来の高い伸びだった6月の1.3%以下を保ちます。生産労働者・非管理職は1.4%上昇し、8カ月連続でプラス圏を維持。こちらも、2021年2月以来の高い伸びとなった6月の2.2%からは遠ざかったままです。
チャート:実質賃金の下落を続けたものの、下げ幅は縮小
(出所:Street Insights)
CPIの結果を受け、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のニック・ティミラオス記者はX(旧ツイッター)で「10月の米雇用統計と米CPIは、7月がFedの最後の利上げとなる見方を強く示唆した。12月FOMCでは、声明文をどのように修正し、Fedの利上げ見送りを反映させるかが大きな議論になりそうだ」と投稿しました。まるで、2022年10月CPIでのCPIショックを彷彿とさせる展開となっています。
ダウは米利上げ打ち止め観測を好感し急上昇し、市場は既に利下げを織り込んで、お祭りモードに突入中。ファンドストラットいわく、コアCPIの31項目のうち、前月比でプラス寄与を示したのが7項目のみだったこともあり、物価高トレンドの終幕への期待が強まったとみられます。年末ラリーへ突進するかのような米株相場をみて、パウエルFRB議長率いるFedは「根拠なき熱狂」と捉え熱を冷まそうとするか、あるいは米経済指標が鈍化するに任せるのか。一方で、気掛かりな点として、①粘着CPIの鈍化ペースのゆるみ、②小売牛肉価格など一部食品の高騰、③WTI原油先物の今後の下げ渋りーーの3つが挙げられます。物価上昇率の鈍化ペースがもたつくならば、Fedは利下げ観測に冷や水を浴びせかねません。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年11月14日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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