言語に対する誤解が断絶を生み出す
言語は文化やアイデンティティと密接に関連しています。言語のことを誤解することで、その言語を話す人々の文化的背景やアイデンティティが軽視されたり、無視されたりします。その結果、言語に対する誤解は、その言語を使う人への信頼や共感を損ない、不必要な緊張や対立を生じさせ、断絶につながりかねません。
誤解をなくし、正確な情報を広めることで、言語や文化の多様性を尊重し、共通理解を促進することができます。異なる言語や文化を持つ人々がより良いコミュニケーションを築き、共に豊かな社会を築いていくことができるのです。
マスメディアに期待することマスメディアは情報の発信源として重要な役割を担っており、その影響は社会全体に及びます。正確性、公正さ、および公共の利益を最優先に考え、情報の検証や信頼性の確保に努めることは言うまでもないことでしょう。

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特に、マイノリティ(少数者)のことを報道する場合は、正確な情報を提供することが非常に重要です。そのためには、まず、マイノリティの文化や背景を正しく理解することが必要です。そして、歴史、言語、伝統、および価値観についての洞察が欠かせません。
さらに、マイノリティに関する情報を収集する際には、当事者であるマイノリティの方々やその分野の専門家などからの情報提供を積極的に取り入れることが重要です。報道に関わる方々には、常に自分の表現は正しいのか、マジョリティ(多数者)視点に偏っていないか、確認することを怠らないでいただきたい。報道の対象である当事者に、私たちマイノリティに、ぜひ聞いてください。
それによって、マイノリティの立場や意見を正確に反映し、バイアスや偏見の影響を排除した取材ができるのではないでしょうか。
マイノリティに関する記事には細心の注意を払うこと取材する際には、マイノリティが意見表明する機会を与え、彼らの声を反映させることが重要です。また、彼らのプライバシーを尊重し、人権を保護するために、倫理的な配慮を怠らないことは当然です。
マイノリティに対する誤ったステレオタイプや偏見を助長するような報道はあってはなりません。広範囲な視点からマイノリティの問題を捉えることが必要です。特に、マイノリティの中にも多様な立場の方が存在するため、それぞれの立場の方への取材が必要で、バランスの取れた記事にしていくことが求められます。そうして初めてマスメディアは、社会全体の多様性と包括性を促進し、偏見や差別を減らす役割を果たせるのです。
NPO法人インフォメーションギャップバスターのWebサイトでは、全米ろう協会発行の「Guidelines for Media Portrayal of the Deaf Community(メディアのろうコミュニティ描写をめぐるガイドライン)」及び「Position Statement On Portrayal Of Deaf And Hard Of Hearing People In Television Film And Theater(テレビ・映画・演劇における、ろう・難聴者の描写に関する意見表明)」の日本語訳を公開していますので、マイノリティ、特にろう・難聴者の描写について、関心のある方は、是非ともご覧ください。
言語に対する正しい理解が共生社会への第一歩
ちなみに、佳子さまは、今年の8月27日に行われた「第40回 全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」で、新たな試みとして、従来のようにご自身で声を出しながらの手話ではなく、手話のみでスピーチされています。
この試みの意図は、手話は音声言語とは別の独立した言語であることを認識してほしいという思いがあってのことです。マスメディア関係者は、このような佳子さまの思いも汲み取った上で、正しい言語の伝え方をしていただきたい。また、社会の皆さまも言語に対して正しい理解をすることで、共生社会への第一歩を踏み出せることでしょう。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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