2023年8月に、独立行政法人国立科学博物館が、目標金額1億円のクラウドファンディングを実施したというニュースが報じられました。

さまざまな国内外の標本や資料を収集し、国内でも最大規模を誇る「国立」博物館が、財政ひっ迫を理由としてクラウドファンディングを行い、大きな話題を呼んだことは記憶に新しいことでしょう。

2023年8月7日(月)から11月5日(日)に実施されたこのクラウドファンディングはどんな結果になったのでしょうか。

クラファン実施の経緯と気になる結果は……?

博物館運営の中枢をなす「標本・資料の収集・保管」にかかる資金調達のために行われたというこのクラウドファンディング。

昨今のコロナ禍での入場者減や光熱費などの運営コスト高騰によって、資金的に大きな危機に晒されたことがこの資金集めに至った理由だといいます。

安定的に標本・資料を収集し、多様なコレクションを適切に保管しつづける体制を維持するため、将来の「調査研究」「展示・学習支援」活動に影響が出ることを防ぐために目標額を1億円に設定しました。

多くの人の注目と支援を集めた結果、プロジェクト開始後、たった9時間で目標金額の1億円を達成し、その後も11月5日(日)の期限を迎えるまで1日も途切れることなく支援が続きました。

最終的に集まった資金は、約9.2億円、支援者は約5.7万人に及んだそうです。

なお、開始から終了までの支援金・支援者数の推移は以下の通りです。初日から翌日は倍に、開始から終了までに4倍になっていることがわかります。

各分野の研究が詰まった博物館

同館は、「地球や生命の歴史と現在、科学技術の歴史」を研究するため、標本・資料を収集しています。

収集の対象は動物・植物・菌類標本・生きた植物・鉱物・化石・人骨、さらには科学技術史資料など多岐にわたります。そして、60人を超える各分野の研究者がこれらの標本をもとに日夜研究に励んでいます。

今回、クラウドファンディングの成功と、「地球の宝を守れ」という大きな目標の達成に向けて、同館の幅広い活動、コレクションの多様性や奥深さ、そこにかける研究員たちの熱意を伝えることを意識し、様々な取り組みを実施したとのこと。

どんなことをしたのか

1つ目の取り組みとして、さまざまな返礼品を検討したそうです。200以上の候補の中から40種類以上のリターンを選定し、返礼品を手にした支援者にコレクションの重要性や魅力が伝わることを心がけたそうです。

また、コレクションクイズ(「コレQ」)を2つ目の取り組みとして実施しました。X(旧Twitter)で、継続的に同館コレクションの中からクイズを出題し、その投稿を見た人が同館コレクションの多様性と魅力に触れる機会を創出しました。

さらに、3つ目の取り組みとして、研究者の熱意を直接届ける動画の配信を行ったといいます。

館長、副館長からのメッセージ動画、コレクションの収集活用の状況を伝えるための特別対談番組などの動画配信が行われました。

なかでも「かはくの偏愛研究室」と名付けた一連のYouTube配信では本や資料の収集、保管、研究、活用の実際や、コレクションにかける思いが研究者自身に語られ、その「推しコレクション」を知ることができるものでした。