知識をわかった気になってはいけない

あちこちで動画や記事、セミナーで専門家が難しい内容をわかりやすく簡単に解説している。最近では60秒のショート動画で短時間で濃度の高い情報を出す人もいる。危ないのは軽く聞きかじった程度で「全部わかった」と思い込んでしまうことだ。

その道の専門家といっても、流派は色々とわかれるしその人の専門知識、技術のレベルにも大きな差がある。英語教師でも英語力や英語使用経験は雲泥の差があるし、税理士でも弁護士でも医師でもそれは同じである。知識や技術の高さと、コミュニケーション能力はまったく別スキルなので「わかりやすく上手に話す人=専門分野の能力が高い人」とは限らない。時には間違っていたり、誤解を招くことを言う人もいる。それをたった数秒間聞いて「全部わかった」と早合点するのは大きなリスクを背負うことになる。

たとえば健康系の情報について言えば、人によっても意見は様々わかれる。栄養はサプリとプロテインでOK!という人もいれば、栄養を固めたものを過剰摂取しても吸収されないから無意味!という人もいる。また、白米やパンなどの炭水化物はエンプティカロリーだから食べるな!と言う人もいれば、しっかり食べてエネルギーを作れ!という人もいる。こうなると誰が正しいかわからない。一番よくないのは、極論を数秒間聞いてこれぞ正解と判断することで、それは自分の健康を害する恐れがある。

自分の場合は歴史に立ち返るのがベストだと思っている。日本人の体のベースは縄文時代とあまり変わらないとされており、極端に特定栄養を過剰摂取するのではなく、できるだけ自然由来で、調理に手間を掛けたものをまんべんなくバランスよく日替わりでとるのが一番いいと思っている。そうすればこれまでの健康の学説がひっくり返されても「リスク分散」は確立できている。

世の中には「思想や宗教などより、科学こそ神だ」と信じる人がいるが、そういう人こそ「科学教」を信仰しているのに等しく、後の科学技術の発展で常識が覆されることを想定していない。科学による証明は「現時点で正しい可能性が高い」というだけで、100%の真理という保証など誰にもできない。だからちょっとかじってわかったつもりで、過剰な生活改善は危険なのだ。

スピード社会だが、結論は急ぎすぎてはいけない。確かに1+1=2のような絶対的な解答は1秒でも速いほうが正義だが、生き方や人間性、哲学や知性を磨く過程においてはファスト思考は命取りだ。それっぽい答えのように見せるのが上手な人に籠絡され、本質を見失ってしまう。時間をかけてでもじっくりスローに思考して人生まるごとを使って答えを追求する。その価値観を忘れてはいけない。

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