「くもんいくもん!」というコマーシャルでおなじみの学習塾「公文式」。東大生の約3人に1人が通っていたという調査結果もあるほどだが、そんな公文式の教材で大学レベルの問題が出てくるということが少し前にネットで話題となった。公文式の数学のプリントを極めていくと、最終的には大学レベルの「ルベーグ積分」の問題が出てくるとのことで、「今までの公文式のイメージを覆された」や「深い! まさか、ここまで教育を体系化していたとは」など驚きの声が上がっていたのだ。公文式の公式サイト上の「学校の教科書と公文式教材の関係」では、算数・数学と英語の学習網羅範囲がそれぞれ記載されている。それによると、最終的なプリントでは、数学であれば大学相当レベルの「集合・微分積分」や「ベクトル空間・行列」などを含んでいると記されている。また英語では、最終的に「ケネディ大統領の就任演説」、ロバート・C・クリストファーの「日本の心」などの長文原書読解があり、こちらも大学レベルの学習内容となっている。

 ちなみに教材の内容・レベルについて確認すべく、運営元である公文教育研究会に取材を申し入れたが、

「お寄せ頂きました内容を、弊社の教室・教材を管理する部署と検討を行いました。大変心苦しいのですが、この度は辞退させていただきたく存じます。何卒、ご理解賜れましたら幸いです」

とのことであった。

 日本全国で1万5000カ所以上の教室を誇り、多くの子どもたちの教育を支える公文式の魅力とは何なのか。意外と知られていない公文式教育のシステムやその目的について、自身の子どもも公文式に通わせているという学習塾プラスティー代表で教育アドバイザーの清水章弘氏に聞いた。

公文式教育の特徴「紙の教材」、実は効率よく学習するために重要な要素

 公文式といえば紙のプリントを使った学習がメインのイメージを持つが、普通の学習塾と比べて、教育体制にどういった違いや特徴があるのか。

「公文式と通常の学習塾との大きな違いは、公文式では自ら学ぶ学習習慣をつけさせることをベースにした教育を行っていることでしょう。学習塾では、講師が学習内容を生徒に教えてインプットさせる学習方式が多いですが、公文式ではまずプリントを渡し、最初に自分の力で解いてみて、わからない箇所を講師が補助的に教え、生徒の学習を助けるという学習方式になっています。多くの学習塾では、教育の主導権を講師が持っているのに対し、公文式では生徒が主体となって学習を進めているという大きな違いがあるわけです」(清水氏)

 自ら学ぶ学習については、公文式の教材の作り込み方でも工夫がみられるという。

「通常ですと、学習分野の知識を教えてからでないと問題を解けないわけですが、公文式の教材では、基本的に前のプリントに出てきた知識を応用する形で、プリントの学習内容が細かくレベルアップしていくので、生徒が自力で解くことができるように教材の作り込み方が工夫されています。こうすることで講師が授業を行う手間が省けるので、コストを抑えられ、通常の個別指導塾より低価格でサービスを提供することができるのです。生徒の自学習慣が身に付くだけでなく、保護者にとっては教育コストを抑えられることも魅力となっているのです」(同)

 細かく段階的に計算された作りとなっている公文式のプリントだが、教育の現場では「紙」の教材を使うことの重要性もあるそうだ。

「紙の教材を使うことの重要性として挙げられることは、間違えた箇所や問題をすぐに見返しやすく、生徒がスムーズに学習することができることです。コロナ期間を経て、学習塾業界では接触を避けるために、タブレット教材による学習が一時期主流になりました。コロナのほかにも、文部科学省の『GIGAスクール構想』が2019年から始まり、児童一人につき一台端末が配布される取り組みによって子どもたちが端末の扱いに慣れているという点と、指導者が不足している点を背景に学習塾でオンライン化が普及していったのです。

 しかし、最近の教育現場では、従来の紙を使った教材の重要性について再考されるようになっています。タブレットなど端末の教材だと、自分がどこを間違えたのか確認することが難しく、学習者にとっては使いづらい面もあります。また、AIを使った教材だとしても、やはり講師など人が適切にコーチングしなければ、学習の効果が思うように見込めなかったこともあり、端末だけでなく紙の教材も並行して使っていったほうが、教えやすく、学びやすいという意見も出てきました」(同)