パレスチナ自治区のガザ地区を2007年以来実効支配しているイスラム過激派テロ組織「ハマス」が10月7日、イスラエル領土に侵入し、1300人余りのユダヤ人らを虐殺したテロ事件はイスラエル国民だけではなく、世界を震撼させた。

ネタニヤフ戦時内閣の閣僚会議(2023年11月08日、イスラエル首相府公式サイトから)

イスラエル軍は現在、ガザのハマス拠点を空爆するなど報復攻撃に出ているが、イスラエル軍の空爆で多くのパレスチナ人が犠牲となっているシーンがソーシャルネットワークサービス(SNS)を通じて世界に流されることもあって、アラブ世界だけではなく、欧米社会でもイスラエル批判、反ユダヤ主義的言動が増加してきている。

英国の「キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)」で教鞭を取るテロ問題専門家のペーター・ノイマン教授は8日、オーストリア国営放送とのインタビューで、「『10月7日』前はイスラム過激主義は停滞し、欧州ではテロ活動の危険性は少なくなってきたと受け取られてきたが、『10月7日』後、イスラム過激主義は再び感情的にも高揚し、活発化してきた」と警告を発する。

ハマスはイスラム過激テロ組織「イスラム国」(IS)のように外国からテロリストをリクルートしないが、SNSを通じて世界のテロリストたちを活動に駆り出させている。ハマスとイスラエルとの戦闘ではシリア内戦のようではなく、「イスラム(教徒)」対「ユダヤ(民族)」の宗教対立が中心テーマに戻ってきている。イスラム過激派の狙いは、欧米社会のイスラムフォビアや反イスラム教への抗議ではない。彼らのターゲットはユダヤ人に向けられているのだ。

ノイマン教授は、「欧州では2015、16年、イスラム過激派テロが頻繁に起きたが、10月7日後、それを上回るイスラム系テロ事件が起きる危険性が排除できなくなった」という。ただし、ISなどのテログループに属しているテロリストによるテロ事件というより、ローンウルフと呼ばれるどの組織にも属していないが、SNSを通じ、イスラエル軍のパレスチナ人への迫害を見て、激怒するテロリストが単独でユダヤ人やユダヤ教関連の施設を襲撃するテロ事件が起きてくるという。彼らのターゲットはユダヤ人だから、「欧州の治安関係者はユダヤ人の安全に全力を投入しなければならない」という。