シンワールは、「イスラエル人は刑務所が私たちの墓になることを望んでいたが、神と大義に対する私たちの信仰のおかげで、私たちは刑務所を祈りの家と学習の場に変えることができた」と述べたという。彼はイスラエルで合計23年間刑務所で過ごし、そこでヘブライ語を学び、メナヘム・ベギンやイツチャク・ラビンの伝記を読むなどしてイスラエルについて研究したという。

シンワール氏を知る人々によると、シンワールはカリスマ性があり、寡黙で、残忍で、反応が早く、決意が強く、インスピレーションを与える人物だという。シンワールは2015年に米国によってテロリストに指定されている。

イスラエルに拘留中、脳に腫瘍が見つかり、2004年、拘留中に腫瘍を切除した。2011年、シンワールはフランス系イスラエル人の兵士ギラッド・シャリットと交換にパレスチナ人捕虜1000人の1人として釈放された。2017年、前任者のイスマイル・ハニヤ氏が組織の最高指導者に就任後、亡命。そのため、シンワール氏はガザ地区ハマスの実質的指導者となって現在に至る。

ハマスが現在、直面している問題は、内部に異なる潮流と、異なる度合いの過激主義が蠢いていること、亡命指導者とガザ指導者の間、政治指導者と軍事指導者の間で権力闘争が生じていることだ。興味深い点は、ハマスはイスラム教スンニ派だが、シーア派の盟主イランから軍事的、経済的支援を受けていることに対して、ハマス幹部の中には「イランとどの程度連携すべきか」で悩んでいる者もいるということだ。

シンワールとハマス指導部は、アラブ系イスラエル人、占領下の東エルサレムとヨルダン川西岸のパレスチナ人、そしてレバノンのヒズボラに対して、彼らをイスラエルとの武力紛争に引き入れようと画策してきたが、これまでのところ、その試みは成功していない。シンワールは現在、人質200人以上を武器に何らかの有利な取引をイスラエルから勝ち取りたいと考え出しているという。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年11月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?