限られた経済状況での工夫
2022年度の各クラブごとの売上高を見ると、福岡はJ1リーグ18クラブ中16位で約28億円。前年度と比べると約7億円増加しているものの、リーグトップで決勝戦の対戦相手でもあった浦和の約81億円と比べると3分の1ほどに留まる。長谷部監督は「資金が乏しいとは思っていない。他のビッグクラブに比べると少ないだけ」と語るが、一方で「我々は5億も6億もする選手を獲ったりはできない。Jリーグの中で大活躍した選手にはなかなか来ていただけません。そういう中でどうしたらいいか、選手編成を含めて考えています」と工夫を明かす。
実際に、ルヴァン杯の決勝戦で2アシストの活躍をみせたMF紺野和也はFC東京時代レギュラーを掴めなかった選手であり、ピッチを縦横無尽に駆け巡り勝利に貢献したMF井手口陽介もセルティック(スコットランド)で不遇の時を過ごしていた選手。その他にもJ1で出場機会を得られなかったり、J2で過ごしていた選手がほとんどだ。経験値が少なくてもチーム戦術に合致する選手を獲得し、個々の特長を伸ばしてきた長谷川監督。
ビッグタイトルを獲得したことで、今後他チームからの警戒心は増すだろう。サイドに追い込むプレスを剥がす術や、コンパクトな守備ブロックを突き破る方法も分析されるはずだ。現在も続く守備のベースを作った2020シーズン、強度を上げ守り勝った2021シーズン、速攻以外の構築を目指すなかコロナ渦に巻き込まれながらも残留を掴んだ2022シーズン、昨年のリベンジをしてビルドアップを磨いた2023シーズン。今後も良い結果を残すためにさらなる進化を求められるが、特別何かを大きく変えることはないだろう。ベースはあくまでも身体を張った泥臭い守備。祝勝会で次の目標を訊かれたキャプテンのDF奈良竜樹が「アウェイでガンバ(大阪)に勝つ!」と力強く誓ったように、チームの意識はリーグ次戦に向けられている。偉業を成し遂げてなお、これまで通り1試合1試合を全力で戦っていく福岡から目が離せない。