”人喰い”といえば、はるか昔に失われた野蛮な文化だと感じる人が大半ではないだろうか。しかし、古の伝統を守り続けているという点から見れば、人間の業の深さを受け入れて、脈々と文化を受け継ぐ姿はある意味でわれわれに畏敬の念さえも抱かせる。
アスマット族は、アメリカの名門財閥ロックフェラー家出身のマイケル・ロックフェラーを食べた残忍な部族として知られているが、一方で、同じく儀式の一環として人肉を行うインドのアグホリ僧と一緒に時間を過ごした写真家は「彼らは他の宗教と同じように美しい宗教観を持っている」と語っている。2020年の記事から、現代の文明から隔絶され、部族の慣習に従って共食いを続ける部族4選を再掲する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※ こちらの記事は2020年4月25日の記事を再掲しています。
「人喰い」は、現代でも脈々と受け継がれている。ヒューマニティやテクノロジーなど存在しない、世界から隔絶した一部の地域では、共食いを含む古代からの慣習を守り続けている部族が実在する。
世界の他の地域から切り離され、100年前の伝統に従い続ける部族の一部を紹介したい。
アスマット族

アスマット族は、ニューギニア島の南にある100の集落に住んでいる。
狩猟を行うアスマット族は多産で、木彫り、彫刻、そして残忍な習慣を持つことで知られている。
アスマット族は約60年前、名門ロックフェラー家の相続人マイケル・ロックフェラー(当時23歳)のボートが、ニューギニア南西部の海岸沖で転覆した後、彼を殺害し、食べたとされている。
マイケルは海岸に泳ぎついた後、部族の男に刺された。その後、彼は殺害され、そのまま部族の儀式として食人の対象になったという。
アスマット族は敵を狩り、その頭蓋骨を貴重なものとして祀る。まず、敵の脳は取り除かれ、悪霊が身体に入るのを防ぐために、鼻の穴部分を閉じる。男たちが円陣を組み、呪文を唱えるなか、敵の肋骨や胸骨は斧で折られ、腕と脚は切り落とされ、内臓は引き抜かれる。
脳みそをヤシの葉の上に取り出し、少しも取り残しがないように、頭蓋骨の内側をナイフでこすり落とす。その後、脳の塊をサゴ椰子と混ぜ、葉で包み、それを火で焼く。これはアスマット族にとって貴重な、そして特別な料理だ。
アグホリ僧

インド、バラナシのアグホリ僧は火葬場の近くに住み、儀式の一部として人間の肉を食べる人々だ。このミステリアスな部族は、生きている動物の頭をかみ砕き、死骸の上で瞑想する。そのメンバーは、マリファナ、アルコール、瞑想を組み合わせ、精神的な啓蒙を求めるという。
しかしアグホリ僧は、儀式のために人を殺すことはしない。儀式では、彼らはマントラを唱え、ヒンドゥー教の神シヴァ神に供物を行う。
そこでは火葬をする余裕がない一家は、家族の死体をガンジス河に流す。アグホリ僧は、そのガンジス河に浮かんだ死体を手に入れるのだ。
写真家のタマラ・メリノは、アグホリ僧と一緒に時間を過ごした経験から、こう語る。
「彼らは人、動物、自然へ、多くの愛と尊敬を持っている人々です。彼らの宗教は、他の宗教と同じくらい美しいものでした」