最近、クシタニとゴールドウインからオフロードウエアが発売されましたね。

どちらも久しぶりの発売となりますが、今から25年ほど前には多くの国内ブランドがオフロードウエアを発売していたのです。

クシタニ、ゴールドウインを始め、RSタイチ、南海部品、ラフ&ロード、ファクトリーベア、風魔プラスワンなど、モトクロスやトライアルのトップライダーも身に着けていました。しかし、オフロードバイク人気が沈静化していき、国内ブランドはオフロードウエアから撤退。オフロードウエアは海外ブランドが主流となっていきました。

ここ最近はアドベンチャーバイク人気が高まったり、キャンプツーリング人気が再燃したりと、本格的なオフロードライディングというより、キャンプ場の未舗装路や荒れた舗装林道を走行するなど、ちょっとしたダートを走る機会が増えたように感じています。

海外では依然としてオフロード人気は高く、とくにハードエンデューロと呼ばれるトライアルのセクションのような地形に挑むレースの人気も高まっています。そして日本でもハードエンデューロ人気は急上昇中です。

そんな流れもあり、海外ブランドのオフロードウエアも速乾性、伸縮性にすぐれた素材を用いた高機能なシリーズも登場してきました。高機能なバイクウエアといえば、クシタニやゴールドウインも実績と定評がありますから、オフロードウエア再開発のきっかけとなったのかもしれませんね。

多くのブランドが撤退する中
勢力的に活動を展開

90年代後半に国内ブランドがオフロードウエアから撤退していった頃、ロッキースポーツからHWKというオフロードウエアが発売されました。ロッキースポーツは東京鶯谷に店舗を構えるオフロードショップだったのですが、ハンドルバー、ハンドガードといったパーツを独自に開発販売したり、オフロードレースを主催したり、オフロードの灯を守るかのように精力的に活動していたのです。ロッキースポーツはモトクロスやオフロードの耐久レース・エンデューロのライダーをサポートしていたこともあり、HWKは多くのオフロードライダーが着用する人気ブランドとなっていきました。

そのエンデューロやモトクロスは、ライダーが積極的に身体を動かすことでバランスを取りながら悪路を走行するので、街乗りやツーリングよりも転倒する確率も増え、身体にかかかる負担も大きくなりがちです。特にジャンプの着地や段差を乗り越える際の衝撃は足腰に負荷がかかりやすく、腰痛の原因になったりもします。

そこでロッキースポーツは1998年にアスリート向けの腰椎ベルト「エルゴベルト」を発売。腰椎ベルトはそれまでにも発売されていましたが、医療用サポーターをベースに開発されたものが主流でした。医療用はサポート効果は高いのですが、ライディング時の身体の動きは考慮されておらず、装着感は快適とは言い難いものでした。

人間工学を研究し、腹圧を上げる(内臓が集まっている空間に圧力をかける)ことで腰椎や脊椎にかかる負担を軽減する形状のベルトを開発したのです。

エルゴベルトは、骨盤で最大となる腸骨を圧迫することで、腰椎の土台となる仙骨を安定させる。上下非対称のWAVE形状は、ライディング時の自由度を妨げないためのデザインだという。
白いパーツは背面のズレを防止するグリップ。激しい身体の動きにも追従して、エルゴベルトを最適な位置にキープする。
伸縮方向を一方向に制限した素材と、まったく伸縮しない素材とを組み合わせることで、背面は強く保持しながら腹部の圧迫感を軽減するサポート力を実現している。

このエルゴベルトの効果はオフロードライダーから口コミで広がり、オリンピックやワールドカップに出場するアスリートも着用するようになっていったのです。その後2010年頃まで、女性向けのサイズ展開や、長時間着用しても快適さが損なわれない形状など改良が続けられていきました。