紀元前4世紀の“セックス教本”には何が書かれていたのか――。女性の著者による古代ギリシアの性の指南書は誘惑からお世辞、キス、性交に至るまでのプロセスを懇切丁寧に指導する内容であった。

古代ギリシアの“セックス教本”

 古代ギリシアの市民は、科学、哲学、芸術を謳歌していた文化人であったことがわかっているが、寝室での娯楽についても探究心旺盛なイノベーターであった。「サモス島のフィラエニス」と呼ばれる女性が古代ギリシアの“セックス教本”を執筆していたのだ。

 エジプト・カイロから南南西へ160キロメートルにあるオクシリンコスはエジプトで最も重要な遺跡の1つといわれ、ここでプトレマイオス朝からローマ属州時代のパピルス文書が大量に見つかっている。

 発掘されたパピルスの中からは、紀元前4世紀の古代ギリシアで執筆された“セックス教本”が1970年代に発見されている。そして1972年にこの“セックス教本”と思われるものについてのいくつかの調査結果が発表されたのだ。

「古代セックスマニュアル」を書いた女性フィラエニスは何者か? 体型別のテクニックからナンパの指南まで
(画像=画像は「Wikimedia Commons」より,『TOCANA』より 引用)

 残念ながら本書の大半は不明であり、今のところはいくつかのページの断片が確認されているのみではあるだが、作者は「サモス島のフィラエニス(Philaenis of Samos)」と呼ばれる女性であることが示されており、同じくその時代に作られたと考えられている古代インドの性愛論書『カーマ・スートラ』を彷彿とさせる内容であるということだ。

“セックス教本”は本質的に実用的で簡潔な言葉と表現で書かれており、いくつかのセクションに分かれている。教本では男性の読者が誘惑からお世辞、キス、性交に至るまでの一連のプロセスを模擬体験できるように構成されている。

「誘惑について」の章でフィラエニスは次のようにアドバイスしている。

「誘惑する者は、女性受けを狙っているような男だと思われないように、髪を櫛で整えたりせずだらしない感じで女性のところに行かなければなりません……」

「お世辞について」の章では誘惑したい女性を褒める時には特定の神を引き合いに出すのがいいとアドバイスしている。

「あなたは女神に等しいとお世辞を言い、醜い彼女はアフロディーテ(愛と美と性)のように美しく、年上の彼女はレア(大地の女神)のようだと褒めることです」

「性交について」の章でフィラエニスは、パートナーの女性の体型に応じてさまざまなテクニックを使用するように指示している。フィラエニスによれば「小柄」、「大柄」、「華奢」など、さまざまな体型の女性に相応しい体位やテクニックがあるという。しかしこの章の大部分は欠落しているので興味深いもののその詳細はわからない。

「古代セックスマニュアル」を書いた女性フィラエニスは何者か? 体型別のテクニックからナンパの指南まで
(画像=画像は「Wikimedia Commons」より,『TOCANA』より 引用)