“ヤンキー”という言葉に含まれるニュアンスのように、若さが大きな価値であったアメリカ社会にも高齢化の波が押し寄せている。特に議員などの政府当局者の高齢化はすでに国家の安全にとって脅威になっていることが最新の研究で報告された――。
■国会議員の認知症が国家安全保障の脅威
空軍士官学校の卒業式の壇上で転倒したバイデン大統領の危うい姿はたとえ支持者であっても複雑な気分になりそうだが、気づけば大統領をはじめアメリカの議会は高齢者ばかりになっている。
議員をはじめとする政府当局者の高齢化はすでに国家安全保障上の脅威になっていることが、米シンクタンク「ランド研究所」が4月に発表した研究レポートで報告されている。

「機密情報を扱っていた、または保持していた個人が認知症を発症し、知らず知らずのうちに政府機密を共有した場合、安全保障上の脅威となる可能性がある」とレポートは指摘する。
研究が指摘しているように、現在のアメリカ人はかつてないほど長生きしており、高齢化に伴うアルツハイマー病をはじめとする認知症がこれからの社会でますます増えることは確実である。
「人々の寿命が長くなり、退職の時期が遅くなるにつれ、職場における認知障害に関連する課題に対処する必要があります。私たちの限られた調査では、この懸念が新たなセキュリティの盲点であることが示唆されています」(同レポートより)
国家の機密情報にアクセスする資格となる「セキュリティ・クリアランス制度」の導入が日本でも検討されてはじめているが、ランド研究所のレポートはこの制度の資格審査において加齢に伴う認知機能の低下についてはまったく考慮されていないことを指摘している。
米上院共和党トップのミッチ・マコネル氏(81歳)は今年8月30日、選挙区のケンタッキー州で記者団らの質問に答えていた際、30秒以上言葉を発せず、凍りついたように立ちすくんでしまい、急遽記者会見を中断し、付き添いとともに退場する事態が起きている。マコネル氏にとってこうした出来事は初めてのことではなく、アルツハイマーの可能性があるとの声も囁かれているようだ。

さらに前出のバイデン大統領(80歳)の転倒など、民主党員を含む有権者にとって議員の高齢化は明らかな懸念事項となっている。