1990年代の「RVブーム」が起点となり、セダンから”ファミリーカー”の座を奪った「ミニバン」ジャンル。しかし近年、ミニバンの人気を奪いつつあるのが「SUV」ジャンルです。
2010年代半ばから日本国内の各自動車メーカーが相次いで新型のSUVを開発。年代問わず多くの車好きから支持を集めるようになりました。今や妻子持ちの男性からも、子どもが成長してきた段階でコンパクトカーからの買い替え候補に選ばれるようになりつつあります。
しかし、家庭のおサイフを握っている奥様たちは、ミニバンではなくSUVを購入することに納得しているのでしょうか。現在のミニバンとSUVの販売状況について、最前線を担うディーラーに直撃してみました。
目次
「ファミリーカー=ミニバン」はもう時代遅れ?
人気を集めているボディタイプは?
「ファミリーカー=ミニバン」はもう時代遅れ?

ミニバンやSUVなどのジャンルで多彩なラインナップを揃えるトヨタ。ディーラーで販売スタッフに、近年ミニバンの人気が奪われている要因について、話を伺うと予想外の回答が返ってきました。
「”ミニバンである必然性が無いこと”が人気低下の理由と見ています。”家庭のお財布”を握っている奥様の反応は、「必ずミニバンがいい」から「他の車種も…」に変化してきているようです。
おそらく、核家族化や少子化が進んでいることから、一世帯で3人から4人程度と家族の人数が少なく、お子さんが大きくなっても無理にミニバンへ買い替える理由がなくなってきているのではないでしょうか。
他にも、家庭での収入の伸び悩みや他の交通機関を使ってお出かけされるなど、車を取り巻く状況は変わってきています。
”近所へ買い物に出かけたり、送り迎えに使ったりする程度ならミニバンでなくても”との考え方があるので、その手のお客様にはミニバン以外の車種をおすすめさせていただくことが多いです」
国の調査によると、子どもの平均出生率は「1.30」前後を推移していて、ひとつの世帯で子どもが2人以下の家庭が多くなっています。加えて、日本の給与所得は平均433万円(令和2年分、国税庁調べ)と苦しい局面にあることも、車選びに変化をもたらしているようです。
また、新車価格の高騰も車選びに大きな影響を与えていると言ってよいでしょう。

ホンダを代表するミニバン「ステップワゴン」を例に挙げると、2022年にフルモデルチェンジした6代目モデルは、車両本体価格が299万8600円(税込)~の設定。RVブーム真っ只中の1996年に誕生した初代モデルは、車両本体価格が154万8000円(税別)~ですから、ステップワゴンは25年ほどで約145万円も値上がりしたことになります。
当時と物価が異なり、安全装備の充実を図って性能や質感がアップしていることを加味しても、あえてミニバンを購入するメリットが無くなってしまっているのも要因となっているようです。
人気を集めているボディタイプは?

ミニバンが人気を低下させている一方で、”クロスオーバー”と名乗った都会派向けのSUVが人気を集めつつあります。特に、コンパクトカーに近いサイズ感のモデルが人気を獲得しているようです。
トヨタのディーラー販売スタッフは次のような見解をしています。
「近年は、ミニバン系よりもSUV系の車種の注文が伸びていて、ほぼ互角ぐらいになってきています。
都市部や住宅街の狭い路地でも運転しやすいコンパクトサイズのSUVが増えているのが人気を集めている要因だと考えています。
トヨタではひと昔前まで、”SUV=ランドクルーザー”と考えられているお客様が多い印象でした。レジャーで山や海に出かける家族連れの男性ユーザーがランドクルーザーを1台目で購入し、2台目としてヴィッツ(現・ヤリス)などのコンパクトカーを購入していたのはよく見受けられたケースです。
しかし、ここ数年でメーカー側は、ライズやヤリスクロス、カローラクロスを一気に投入しました。

特に、ライズはボディが5ナンバーサイズで、狭い駐車環境でも停めやすく、女性でも運転しやすいと好評です。一方で、外観のデザインに優れ、4人や5人で乗っても荷物を十分に積み込めるヤリスクロス、カローラクロスも、奥様を充分説得できるモデルとなっています」
デザインや使い勝手に優れていることが、近年のSUV人気に繋がっているとのこと。
車を取り巻く情勢が変化しているのもありますが、1台で近所のお出かけから週末のドライブまで対応できる柔軟性がファミリー層に受け入れられている要因となっているようです。