FW山岸祐也「サポーターと一緒に喜びたい

すでに決勝戦が待ち遠しい様子のFW山岸祐也は、この日の練習でも持ち前の明るさを発揮していた。

「今日はオフ明けだったんですけど、初めにシゲさん(長谷部茂利監督)が『楽しもう』と言っていて。今回、国立(競技場)が満員になることが予想されているので凄い楽しみです。アビスパの歴史を変えられるチャンスでもあるので、ワクワクする充実した1週間になるのではと思っています」

浦和レッズには、DFマリウス・ホイブラーテンとDFアレクサンダー・ショルツという屈強なセンターバック陣が揃っており、リーグ戦では31試合で22失点とJ1最少を記録している。そんな浦和の守備を崩すのは容易ではない。しかし山岸は、対峙が予想されるDF2人に対して前回の対戦時から悪くない印象を抱いていた。

「ヘディングで競っている時に相手のセンターバック2人が嫌がって、向こうがちょっと後手を踏んでいる感じもしていた。引かずに戦いに行くところは絶対やらなきゃいけないし、それだけじゃなくて相手の4バックの前で受けたり、センターバックを釣ったり、ポジショニングを崩したり動かしたり相手の嫌なことを常に狙いたい」

決勝戦の舞台は国立競技場。その立地から、浦和サポーターの割合が多いと予想される。しかし、福岡からも飛行機や新幹線、フェリー、夜行バス、自家用車など様々な手段で大勢のサポーターが駆け付けるだろう。山岸の目は、そんな福岡サポーターたちに向けられていた。

「(観客席が)どんな割合だろうが、自分たちを応援しに来てくれる福岡のサポーターがいるわけで、自分はその人たちのために頑張ろうという気持ちでやりたいし、勝ってその人たちと一緒に喜びたいと思っています。絶対に勝ちたいです」


アビスパ福岡 長谷部茂利監督 写真:Getty Images

長谷部茂利監督「準優勝ではなく優勝

2022AFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)を制し3度目のアジア王者となった浦和を、長谷部監督は敵ながら高く評価していた。

「ゲームの持っていき方、試合の締め方も含めて上手ですね。強いです。また、相手(浦和)のサポーターも数多く詰めかけると思うので、雰囲気を作ることも上手だと思います。(守備も)能力の高い選手が個人で防いでいる面とグループのところでうまく押さえている部分がある。攻撃だけでも守備だけでもなく強いチームですね」

ビッグタイトルの常連である浦和を下し王座を獲得するのは簡単ではないだろう。長谷部監督はそれを十分理解したうえで、来季以降も自身が指揮を執ることが決まったクラブの悲願達成を誓う。

「クラブが成長を遂げてきた証として、準優勝ではなくて優勝があるかないかでは違うと思う。これからまた先へ進んでいく時、上を目指すうえでは次に勝つことがあらゆる意味で良い方に向かうと思うので、ぜひ勝ちたいです」

チームを後押しするサポーターに対しては「皆さんの思いを背負って戦います。応援よろしくお願いします」とカメラを見据えながらシンプルで力強いメッセージを送った。

この日の練習には怪我で離脱していた選手も合流し、決戦を前に最後の調整を行った。通常のリーグ戦では前泊が通例となっているが、重要な一戦を万全のコンディションで迎えるべくチームは前々泊を予定している。ベンチ入りしない選手も同行し、チーム一丸となって挑む大舞台。共に歩んだサポーターたちの声援を味方につけ、念願の白星を手中に収めることができるのか。クラブ史上初となるビッグタイトルの獲得は目前だ。