国立競技場で11月4日に開催される2023YBCルヴァンカップ(ルヴァン杯)の決勝戦。2016年以来7年振りの優勝を目指す浦和レッズと対戦するのは、クラブ史上初のタイトルを狙うアビスパ福岡。ビッグタイトルを一度も手にしたことのない福岡にとって転機となり得る大舞台だ。10月31日、緊迫の一戦を5日後に控えた福岡が決勝前最後の公開練習を行った。
快晴の下で行われた練習後、キャプテンのDF奈良竜樹とエースのFW山岸祐也、長谷部茂利監督が取材に応じ、初タイトルが懸かる試合への想いを語った。
DF奈良竜樹「小手先の物はすぐ剥がされる」
オフ明けのこの日、練習場には和気あいあいとした普段通りの雰囲気が漂っていた。しかし、DF奈良竜樹はルヴァン杯決勝に向け、徐々に緊張感が高まる現状を次のように語った。
「僕の中ではまだいつも通りのトレーニングでしたけど、(決勝まで)あと数日となってくると、カウントダウンと共にどんどん昂ぶる感情と、いろんな不安や緊張もあったり、そういうものが出てくると思います」
直近のリーグ戦では第30節で川崎フロンターレに2-4、第31節は横浜F・マリノスに0-4と大量失点での敗北が続いている福岡。アグレッシブなチャレンジの結果ではあるものの、決勝に向けては切り替えが欠かせないだろう。
「リーグ戦では2試合連続という悔しい結果の中で今週を迎えています。チームとしてもそうですけど、一人ひとりがポジティブに気持ちを切り替えられるように、できる働きかけをしたいです。僕個人に関しても、もう1回リセットして良いマインドで臨めたらいいなと思っています」
長谷部茂利監督の就任後、一戦必勝の試合に向けてチームが常に大切にしてきた“まとまり”を、奈良も改めて重要視しているようだ。
「リーグだと『次の試合、また次の試合』と続いていく中で、ルヴァン杯はこの1試合で終わる。ピッチに立てる選手とそうでない選手、いかにチーム全員が勝利のためにまとまれるか。そういう空気は伝染するものだと思っているので、全員が勝利のためにできることを精一杯やれるかどうかが大事じゃないかなと思います」
今2023シーズンの福岡は、ハードワークと堅守速攻に加えてパスワークが向上。なかでも、第28節の柏レイソル戦(3-1)はその成果が表れた勝利だったと言えるが、奈良は決勝を制するカギをチームのベース部分にあるとみている。
「いろいろブラッシュアップしてきた部分もあるし、それが結果として出せた試合もあった。ただ、自分たちがJ1に上がってから積み上げてきたものは、監督が常に言っている『全員で攻撃して全員で守備する』っていうところ。そのベースがなければ、小手先の物はすぐ剥がされると思っています。それだけで勝負するのは絶対に無理なので。在籍年数や国籍、それぞれのキャリアも違いますが、今まで積み上げてきた部分があって、その上でいろんなトライをしている。そういうものを全部捨て去って新しいものを構築しているわけではないので。全員で守ったり、際のところで身体を張ったり、セカンドボールをみんなで拾ったりを大事にしたい。一見して綺麗じゃなくても、派手じゃなくても、それを全面に出して(優勝を)勝ち取りたいなと思っています」