■なぜ我々は“永遠”に恐怖するのか?
米メイソン大学のマーティ・ウィーナー教授によると、「長期的計画」を司る前頭葉は成長過程の最後期に発達するため、幼少期に入ってから、たとえば「いつか大人になる」といった漠然とした理解が芽生え、それと同時にアペイロフォビアを発症するようになるという。
「アペイロフォビアでは、死後にも永遠に生きると“理解”するようになり(もしそう信じるとしたらですが)、その状態を頭の中でシミュレーションしても“永遠”を未来へ投射する方法がないことに気付きます。この経験が不安を煽るのです。この不安感は、成長や加齢、死に対する感情とそれほど違うものではないでしょう」(ウィーナー教授)
人間は未来を思考する能力を持つが、それにも限界がある。このことを誰よりも鮮烈に指摘したのは、ドイツの哲学者イマニュエル・カントだ。カントは、「時間・空間が無限かどうか」は人間の知性では判断できず、肯定しても否定しても「アンチノミー(二律背反)」に陥り、矛盾してしまうと喝破した。また、ブッダも「世界は永遠か?」といった無限を問う質問には沈黙を守ったと伝えられている(十無記)。
アペイロフォビアの治療法は「自らの生に集中し、死を心配しないようにすること」だと先述したが、通常は成長するにつれ死の恐怖は徐々に薄まっていく。それに加え、人類学者アーネスト・ベッカーは、ピューリッツァー賞一般ノンフィクション部門を受賞した著書「The Denial of Death」(1973)で、現代人は文化、宗教、あらゆるエンターテイメントで気を逸らし、死を否定しながら生きていると語っているように、我々の回りには“気晴らし”のための道具が溢れている。
このような状況ではむしろ、多少のアペイロフォビアは歓迎すべきかもしれない。この不安感を忘れることができず、哲学や物理学の世界に身を投じ、偉大な業績を残した学者は数多く存在する。これを機に少し気晴らしから身を引いて、 “永遠”や“無限”に思いを巡らしてみては如何だろうか? (TOCANA編集部)
参考:「The Atlantic」、「Phobia Wiki」
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提供元・Business Journal
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