もの心がついた頃、宇宙の不思議さに身震いした経験はないだろうか? 「宇宙の前に何があったのだろう?」、「宇宙はどこまで続いているのだろう?」と疑問に思っては、その問いの底知れなさに頭がパンクしそうになったことはないだろうか?

“無限”や“永遠”を前にしたこの不安は「アペイロフォビア(無限恐怖症)」と呼ばれ、古代ギリシアの哲学者アナクシマンドロスが万物の根源(アルケー)だと考えた「ト・アペイロン(無限定なるもの)」に由来する。

■治療困難な恐怖症「アペイロフォビア」とは?

 英語で「Apeirophobia」とグーグル検索すれば、「Reddit」「Yahoo! Answers」といった海外掲示板で盛んに取り上げられているが、英語版「Wikipedia」でさえまだ記事化されておらず、広く認知されているとは言い難い現状だ。事情は日本でも変わらず、「アペイロフォビア」や「無限恐怖症」で調べてもほとんど検索にひっかからない。

「The Atlantic」(2016年9月1日付)によると、心理学や精神医学といった専門分野でも、恐怖症の1つとしてまだ認知されておらず、世界中で広く用いられている精神障害の分類基準『精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)』(アメリカ精神医学会)にも記載されていないという。

 唯一「Phobia Wiki」でアペイロフォビアの定義らしきものが掲載されていたので引用しよう。

 アペイロフォビア(無限恐怖症)は、永遠にたいする恐怖。しばしばタナトフォビア(死恐怖症)と結び付けられる。多くの無限恐怖症患者は、特に死後の生(アフターライフ)が永遠に終わらないことを知った後、生が永遠に続くと信じるようになる。

 アペイロフォビア患者には次のような症状が見られる。永遠性への強迫神経症的固執、自己制御と集中力の欠如、疲労、食欲不振。

 治療は困難。1つの治療法は、自らの生に集中し、死を心配しないようにすること。(Phobia Wikiより引用)

 治療法がほとんど無いとはなんとも恐ろしいが、通常は成長とともに改善するという。それにしても、どうして我々は“永遠”に恐怖心を抱くのだろうか?