現在、日本を含めたG7諸国は、国連などの国際機関を通じたガザへの人道支援に〇〇ドル拠出する云々といった内容の声明を発し続けている。残念だが、これでは効果が乏しい。なぜなら今問題になっているのは、人道支援をガザに入れられないことだからだ。問題から目をそらして、巨額とも言い切れない額面のお金を少しずつ積み上げて小出しの声明を出すことに官僚機構の労力を浪費してしまうとしたら、愚策だ。
アメリカを通じてイスラエルに対して、自衛権行使を擁護する姿勢と引き換えに、人道支援をガザに入れることに対する理解を示すことを要請するべきだ。
ただし単に乏しい量の人道支援物資をトラックで運んで倉庫に置いても、管理を行き届かせたやり方で適正な配給をすることは、極めて難しい状況だ。すでに限定的に入った人道支援物資が略奪に遭う事例も発生しているようだが、現在の過酷な状況では、むしろ必然的な流れであろう。軍事部隊のような物理的防御能力と輸送移動能力を持った組織による人道支援活動の保護が、必要である。
G7諸国がガザに軍事部隊を展開させるシナリオは、非現実的かつ不適切だと言わざるを得ない。ガザの市民の間での信頼感が低い軍隊の介在は、事態をかえって混乱させる。
しかし逆に、南アフリカやトルコなどの近隣とは言えない地域にありながら関心を持って事態の推移を見守っている諸国の政府が、具体的な貢献をしたい意思を表明している。
10月初めに国連安全保障理事会は、ケニアの治安部隊を主体にした「多国籍治安支援(MSS)」部隊がハイチに展開することを認める決議を採択した。MSSは、国連PKOとしてではなく、重要な民生施設を警護することを目的にした多国籍警察部隊として展開する。ガザにおいても、和平合意がすぐに成立するような状態ではないため、国連PKOの展開は想定されない。
しかし人道支援活動の警護に特化した多国籍部隊の派遣に、国連安保理が権限付与することは、もう少し現実的なシナリオとして議論の対象になり得るのではないか。展開してくれる国さえあれば、あとはアメリカが安保理で拒否権発動しなければ、決議は成立するだろう。アメリカが拒否権を発動するかどうかは、イスラエル政府の態度によって影響されるだろうが、まずはアメリカがイスラエル政府を説得しようとするかどうかによる。
G7にとって重要なのは、国連PKOにおける堅実な実績があり、友好な関係にあり、しかもイスラム圏の諸国であるASEANのインドネシア、あるいはバングラデシュなどであろう。ガザに隣接するエジプトも、実は国連PKOなどの国際平和活動での経験が豊富な部類の国である。
これらの諸国と連携し、国際的な活動を支援する姿勢を、G7諸国は見せていくべきである。それはガザの市民のためであり、G7の存在感の維持のためでもある。
威信が低下しているG7諸国が、当たり前のことを確認するだけの声明を出し、しかも時代錯誤にも偉そうに説教くさい語り口で他者に責任を押し付けるような態度を見せながら、ただ主導権だけは握りつけたいといった姿勢を取り続けたら、その威信はさらに一層低下していくだけだ。憂慮する姿を素直に表現しつつ、謙虚に他の諸国と協力し、後方支援体制を充実させることに尽力したい姿勢を見せるべきだ。
G7の中で最も穏健な立場をとりながら、ホスト国となっている日本が、ただ自らを埋没させ続けるような態度をとるのではなく、自らの立ち位置を活かしきってG7を国際協調体制の中に入れ込んでいくための努力を惜しまない姿勢を見せるのであれば、それは日本外交にとっても大きな意味を持っていくことになるだろう。
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提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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