このTRBV9がこのHLA-B*27:05に結合した抗原との複合体を認識する(見つけて結合する)ために重要で、症状がひどい時に患者さんの末梢血や炎症部分に、このTRBV9を持つリンパ球が増えている。
そこで著者たちは、このTRBV9を持つリンパ球に対する抗体を利用して、血液中からこの種のリンパ球を排除することを試みたのだ。他の治療法が効かなくなった患者さんでも、劇的な効果があったというのがこの論文の主旨だ。これらのリンパ球は、リンパ球全体の約5%であるようで、それがなくなっても免疫機能を大きく損ねることはないと記載されていた。
特定のHLA型が特定の自己免疫疾患に関連することが報告されている。重篤な薬疹では、HLAのクラスIタイプと薬剤のコンビネーションが大きな鍵を握っている。この論文と同じような方法を応用することによって、TRB抗体療法で治療することも可能だ。もちろん、他の自己免疫性難病にも応用できる。新しい未来が見えてきた。
そして、最後に強調したいのは、この論文はロシアから投稿されたものだ。医学に国境はない。患者さんを救いたい気持ちは世界共通のものだ。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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