イギリスの不動産1500軒超がオフショア企業を通じた購入であることが判明。こうした不動産の所有者には、汚職疑惑のある個人も含まれていた。 カタールの首長一族が、ロンドンの高級住宅をめぐり1850万ポンド(約28億円)を脱税していた。 イギリスの実業家サー・フィリップ・グリーン夫妻が、経営破綻したブリティッシュ・ホーム・ストアを売却した後、高級不動産を買い占めていた。 英保守党の著名な資金支援者が、ヨーロッパ最大規模の汚職スキャンダルに関わっていた。 ヨルダン国王が、ひそかに所有していた会社を通して、イギリスとアメリカの不動産購入に7000万ポンド(約105億円)を使った。

たしかに、ネガティブに取り上げたくなる点が満載ですが、必ずしも違法という話ではありません。

BBC News Japanの「脱税」事案、どこが「脱税」なのか深堀りしてみた!

しかし、上から2つ目の例「カタールの首長一族が、ロンドンの高級住宅をめぐり1850万ポンド(約28億円)を脱税していた。」というのは、見過ごせません。

この事案を深堀りしてみましょう。

同一事案について書かれたと思しき記事が、同じBBC(2021年10月5日)に載っていました。「Pandora Papers: Qatar ruling family avoided £18.5m tax on London super-mansion」(「パンドラ文書:カタールの統治一族がロンドンの高級住宅について1850万ポンドの税を回避」、日本語訳は筆者が付けたもの、以下も同じ)です。

本文中に以下の記載がありました。

The family bought the properties in central London via offshore companies for over £120m and applied to make them into a 17-bedroom “super-mansion”. There is no suggestion that either the Qatari family or the sellers of the two properties acted illegally.(「一族はオフショア企業を通じてロンドン中心部の物件を1億2000万ポンド以上で購入し、17ベッドルームの「超大邸宅」にすることを申請していた。カタール人一家と2つの物件の売り手、いずれについても、違法行為を行ったことを指し示すものは無い。」)

この記述、BBC News Japan(2021年10月6日)の「1850万ポンド(約28億円)を脱税していた。」という記述と明らかに反していますよね。

私は英国の税法については専門外なので断定はできないのですが、おそらく以下のような事案だと思います。

Aさんが個人で所有しているロンドンの高級住宅をBさんに売却する場合、1850万ポンドの印紙税がかかるものと思われます。

しかし、Aさんがオフショア法人を設立して、そのオフショア法人がロンドンの高級住宅を持っている、そしてAさんがこのオフショア法人の株式をBさんに売却する場合、1850万ポンドの印紙税は不要になるものと思われます。

そして、BBCは、この取引には違法性が無いと述べているのです。

カタールの首長による節税はほんの一例、オフショア法人で可能になる節税は様々!

このように、不動産を購入するたびにオフショア法人を設立して、不動産を売却する代わりに法人ごと売却するという仕組み、香港人や中国人がよく行っています。

日本人にとって、法人というのは、オフィス・工場・商店を持ち、多くの人々が働いている、「人・モノ・金の集合体」でしょう。しかし、香港人・中国人や多くの人々にとって、資産を入れておくための箱でしかないこともあるのです。

パナマ文書とパンドラ文書によって、ネガティブなイメージがついてしまった海外法人ですが、香港法人・シンガポール法人・BVI法人などを使うことで、節税する、日本居住者のままではできない投資をするなど、様々な使い方があります。

ぜひ、海外法人を使って楽しく賢く投資をしていきたいですね。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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