渋滞や悪天候などの自分には責任の一端がない事柄に対しても謝罪すると、その後の頼み事が通りやすくなるようです。
この自分自身がどうしようもない事柄に対する謝罪は「不必要な謝罪(superflous apologies)」と呼ばれています。
アメリカのハーバード・ビジネス・スクール(HBS:ハーバード大学の経営大学院)のアリソン・ブロックス氏(Allison Brooks)らの研究チームは、不必要な謝罪が信頼性に与える影響について検討しました。
結果、通行人に「電話を貸してほしい」とお願いする前に、「雨が降って申し訳ない」と不必要な謝罪をした場合は、相手から電話を借りられる確率が5倍近く上昇したというのです。
これは人からどのように信頼を勝ち取るかという問題において、重要な知見かもしれません。
研究の詳細は、学術誌「Social Psychological and Personality Science」にて2013年7月26日に掲載されました。
弱みを見せることは信頼を勝ち得るのか
“Never let them see you sweat(汗をかいているのを見せてはいけない)”
英語にはこのような諺があります。
意味は「困難な状況下でも冷静さを保ち、他人に自分の弱みや不安を見せないようにするべき」だというもの。
ドイツやフランスなど、他の国にもこのような諺があり、古くから弱みを見せないことが強さや成功につながると考えられていたことが窺えます。
しかし自分自身の弱みを見せることは、相手からの信頼を勝ち取ることにもつながるはずです。
たとえば、明らかにミスをしたにも関わらず謝罪を一切しない人と、謝罪をきちんとし自分の非を認める人ではどちらの方が信頼できるでしょうか。
答えは後者でしょう。
しかし「どのような事柄に対し」「どの程度の頻度で」謝罪すれば、相手から不信感を抱かれず、信頼度を増すことができるかについては明確な基準がわかっていません。
そこでアメリカのハーバード・ビジネス・スクールのブロックス氏らの研究チームは、自分に責任のないような事柄に対する謝罪と相手からの信頼の関係性を検討しています。
実験では、実験者が以下の2つのパターンで、電話を借りる為に駅の通行人65名に声をかけました。
不必要な謝罪グループ:「雨が降ってしまい申し訳ない。電話を貸していただけませんか。」(”I’m so sorry about the rain! Can I borrow your cell phone?”)
謝罪がないグループ:「電話を貸していただけませんか。」(”Can I borrow your cell phone?”)
携帯電話は高価で、小さく、壊れやすく、個人の情報を多く含んでいます。
それゆえ、見知らぬ人に携帯電話を渡すことは自分自身を危険な状態に置くことでもあり、研究チームはこの電話を見ず知らずの人に貸すという行動を相手に信頼を置いている指標として用いました。
さて依頼の前に余計な謝罪を挟むことで電話を貸してもらえる確率は高くなったりするのでしょうか。