まず老人医療費を一律3割負担に
その対策は、まず後期高齢者の1割負担という特例を廃止し、すべての老人医療を3割負担にすることだ。それで少なくとも3兆円は医療保険の収入が増えるが、これだけでは激増する赤字に追いつかない。
診療報酬や薬価の見直しなど、やるべきことは多いが、根本的な解決策は後期高齢者医療制度を廃止し、他の医療保険と統合して税を投入することだ。といっても社会保険料を上げることはできないので、財源は消費税しかない。
EU並みに消費税率を20%に上げれば、後期高齢者医療費の増加に対応できるが、岸田首相は消費増税を封印してしまった。おまけに野党までみんな消費減税を要求するのは、無責任もはなはだしい。
国債を増発すると金利上昇で日銀が危機に陥るちょっと前までのゼロ金利時代だったら、帳尻のあわない部分を国債で埋めることもできたが、今は金利が1%上がったら日銀当座預金に5兆円の損失が発生し、統合政府でみると増収分がパーになってしまう。
これは2000年代に消費税の増税に失敗し、それを2010年代にも先送りして、取りやすいサラリーマンから取ってきた自民党政権のモラルハザードである。民主党政権は「後期高齢者医療制度の廃止」をマニフェストに掲げたが、その財源措置も知らなかった長妻厚労相は追放された。
社会保障の中でも年金問題は答がわかっているが、医療保険はぐちゃぐちゃで答がわからない。コロナでも後期高齢者の延命に100兆円以上の税金が投入され、その予備費が余ったら減税する、場当たり的な財政運営が続いている。
このまま医療保険の赤字が激増を続けると、国民皆保険も考えなおさないといけない。ところが日本医師会という最強の圧力団体が、改革しようとする政治家を葬ってきた。その族議員の代表が厚労相になる岸田内閣には何も期待できない。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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