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「性別変更の手術要件」をめぐる判決自体は今年7月11日のトランス女性の女性用トイレ使用に関する最高裁第3小法廷判決とほぼ一直線につながるものであり、その立論の論理構造も酷似している。その意味では、もはや大きな驚きはないが、今回は「違憲判決」であり、その社会的影響ははるかに甚大である。

本判決は7月11日判決と同様、補足意見等も含め全文36頁にわたる大判決ではあるが、論旨は論理の片面性が際立ち結論ありきの荒っぽさが目立つ。

具体的に言うと、本判決は、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」という)3条1項4号を最終的に憲法13条に違反するものとし無効とするのであるが、その判断根拠の主たるものは、

抗告人の如き性同一性障害者に対する医学的知見が進展し、その(身体的)治療については一定のプロセスを想定した段階的治療という考え方をとらず、患者によって様々な治療を任意の順序で行うようになった。 性同一性障害者に対する内外の理解が進み、とくに法令上の性別の取扱いを変更するための手続については欧米諸国を中心に、生殖能力の喪失を要件としない国が増加し、相当数に及んでいる。 特例法3条1号4号の要件はかような社会状況を踏まえれば、医学的にみて合理的関連性を欠くに至っているといわざるを得ない。 治療としては生殖腺除去手術を要しない性同一性障害者に対し、身体への侵襲を受けない自由を放棄して強度な身体的侵襲である生殖腺除去手術を受けることを甘受するか、又は性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けるという重要な法的利益を放棄して性別変更審判を受けることを断念するかという過酷な二者択一を迫るものになったということができる。

やや観念的な言葉が連続するが、要は、医学的知見の進展・欧米諸国の動向が特例法制定時から大きく変化し、生殖腺がないか生殖機能を永続的に欠く状態にあるものでない限り、法律上の性別変更を認めないとする特例法3条1項4号は存在理由を失ったということである。

医学的知見の進展というが特例法制定後わずか5年間でそれほどに変化したというならば、今後さらにどんな変化をするのか予見できるものではない。そのような流動的「進展」状況を判決の根拠とすべきなのか。また、欧米諸国の動向などは画一的に捉えられるものではなく、国ごとに大きく差があり、行きすぎた性自認に対する見直しの動きも顕著である(特に米国)。

かような不安定な謂わば状況証拠を土台にした結論は、果たして法の最終番人たる最高裁判所の展開する議論として適切なものなのであろうか。私が結論ありきの荒っぽさというのはそういう意味である。

さて、本判決が特例法3条1項4号を無効とする最大の理由は、何あろう憲法第13条である。憲法第13条は言う、