「猿だか人だかの脳を輪切りにしたやつ」
藤井:『Dissection : Photographs of a Rite of Passage in American Medicine 1880–1930』もオススメですね。昔は医学生が解剖学を勉強する際に、遺体と一緒に記念撮影する習慣があったらしく、同書はそうした写真だけを集めた写真集です。ブラックユーモアを感じる写真が多く、例えば遺体を囲んで医学生たちがトランプをしているページもあります。

――勉強目的ではなく、普通に遊んでいるだけじゃないですか(笑)。
藤井:同書によると、遺体と記念写真を撮る習慣は、もともと医学生の緊張感を解きほぐすためにあったらしいですよ。まぁ、真偽のほどはわかりませんがね。
――果たして、そんな罰当たりなことをして緊張感はなくなるものなのでしょうか……。
藤井:あと、広島で開業医をしていた越智一格(おち・いっかく)氏が集めた、明治期の医学写真コレクション『Dr. Ikkaku Ochi Collection』には、西郷隆盛もなったとされる陰嚢肥大や、小人症などの写真が載っています。ちなみに、同書はこの連載でも一度紹介した成山画廊のオーナー、成山明光氏のコレクションからの写真集です。ほかにも手に入れるのに苦労した本だと、『外表奇形図譜 外表奇形のモニタリングに関する研究』(外表奇形のモニタリングに関する研究班編)があります。かなりレアな非売品で、口唇裂とか陰核肥大といった病気の写真が載っています。

――大学の刊行物とか公文書とかでよく見るタイプの表紙ですね。藤井さんはこのような学会本まで収集しているんですか?
藤井:そうですね。その流れでいうと、こちらの『臨床医学写真図譜』(東京医学写真協会)もかなりのレア本です。1921年発行で、大正時代のさまざまな奇病の写真が載っています。梅毒の写真をはじめ、巨大陰茎や、ひとつ目小僧のような「単眼症の奇形児」などの写真が紹介されています。同書に収録されている「手と足が4本ずつある奇形児」の写真は、うちにも写真帖に貼り付けられた生写真がありますよ。

――なんで、そんな写真が手元に……。
藤井:最後に定番どころですが、『人体の不思議展』のカタログを紹介しましょう。最近の若い人だと知らない人も多いでしょうね。

――昔、テレビCMをやっていましたね。「本物の人体標本」を展示するという。
藤井:ただ、その標本にされたご遺体が、中国の拷問死した囚人の可能性があるという疑惑や、人権上の問題などの理由で終了したのですが、このカタログでは真っ二つに切られた人体の写真や、「プラスティネーション」という保存技術で加工された本物の人間の脳の写真などが載っていて、なかなか見応えありますよ。
――つい最近までこれが実際に見られたと思うと、恐ろしいですよね。
藤井:あと、これは余談ですけど、うちにもプラスティネーションで作られた猿だか人だかの脳を輪切りにしたやつがありますね。
――また、コレクションなのか、呪物なのか、わからないような物が……。
書肆ゲンシシャ 大分県別府市にある、古書店・出版社・カルチャーセンター。「驚異の陳列室」を標榜しており、店内には珍しい写真集や画集などが数多くコレクションされている。1000円払えばジュースか紅茶を1杯飲みながら、1時間滞在してそれらを閲覧できる。
所在地:大分県別府市青山町7-58 青山ビル1F/電話:0977-85-7515
文=伊藤綾
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
提供元・TOCANA
【関連記事】
・初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
・航空機から撮影された「UFO動画」が公開される! “フェニックスの光”に似た奇妙な4つの発光体
・有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
・ネッシーは巨大ウナギではない! 統計的調査結果から数学者が正体を予測
・積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?