Amazonで60万円超えの「危ない医学写真集」
――前置きが長くなってしまいましたが、今回は「医学・医療写真」というテーマになっています。
藤井:過去に「危ない医療本」を取り上げましたが、今回は写真集を中心に紹介しましょう。まずはアメリカのフィラデルフィアにあるムター博物館のカタログ『Mütter Museum Historic Medical Photographs』です。同施設は頭蓋骨や解剖された遺体などが多数所蔵されている博物館で、カタログも2冊出ています。あと、僕は持っていませんが、カレンダーもあるそうですよ。

――そんなの飾りたくない……。
藤井:肝心のカタログには「犬のフィギュアを飲み込んでしまった子どものレントゲン写真」「尻尾があるフィリピン人」「皮膚描記症」、そして寄生虫の写真などが紹介されています。後半には無脳症や単眼症など、奇形児の写真が大量に載っています。
――昔は奇形児も今よりずっと多かったのでしょうね……。
藤井:病気の治療として、水銀を使っていた時代もあるくらいですからね。ムター博物館のカタログのうち、もう1冊『Mütter Museum of the College of Physicians of Philadelphia』には標本のカラー写真も収録されています。さらに「背骨が弯曲してしまう病気の女性」や「人間の顔を薄切りにした標本」などの写真が載っています。

――ムター博物館は初耳でしたが、相当過激な博物館ですね。
藤井:次に紹介するのは『Masterpieces of Medical Photography: Selections from the Burns Archive』です。これは以前お話したバーンズ・アーカイブの中から、ジョエル=ピーター・ウィトキンという写真家がキュレーションした医学写真の写真集です。

――この連載ではお馴染みのメンツですね。同書はアメリカの医師が収集した19世紀から20世紀初頭にかけて撮影された写真のコレクションということになるんですかね?
藤井:その通りです。「遺体を解剖中の医者たち」「精神病患者」「象皮病の女性」「片足のサイズだけ大きい女の子」の写真などがキャプション付きで載っています。あと、ぜひとも紹介したいのが、オランダの医学博物館のカラー写真カタログ『Forces of Form』という希少本ですね。

――Amazonで60万円超えみたいなんですけど……。
藤井:実際にその価格で売れるかはわかりませんが、表紙のデザインからして格好いいですし、この迫力ですから、その価値はあります。心臓や脳、結合双生児、いろんな部位のホルマリン漬けなどのカラー写真はとにかく美しい……。特に「纏足【編注:かつて中国で女性に行われていた、幼児期より足に布を巻かせ、足が大きくならないようにするという風習】」のカラー写真は、うちのお客さんに響くものがあるみたいです。
――「お隣の国の風習」程度の認識でしたが、改めて写真で見るとまるで四足歩行の動物みたいな足になっていてエグいですね。