「寿限無 寿限無 五劫のすりきれ・・・」」このような一節のある落語を耳にしたことはありませんか?
この「寿限無(じゅげむ)」、落語家が最初のころに覚える噺として落語ファンや関係者の間では広く知られています。
ところでこの寿限無、人物の名前であることをご存知でしたか?

そこでここでは、寿限無という落語の話やどのような背景があるのかを解説します。

「ジュゲムジュゲム〜」は落語に出てくる人の名前

「ジュゲムジュゲム」とはなんのこと?落語に出てくる長い名前「寿限無」の意味を解説
(画像=『FUNDO』より 引用)

ジュゲムジュゲムというのは、落語の噺に出てくる人物の名前です。
その噺の内容がわかれば、なぜこのような名前が名付けられたのかが分かります。

縁起のいい言葉を全部繋げた名前

この話には、子供が生まれたとある夫婦が出てきます。
子供の名前を付けるにあたって、お寺の和尚さんに相談しようと考えました。

相談を受けた和尚さんは、せっかくなので縁起のいい名前をいろいろと教えてくれました。
そんなありがたい由来の名前の候補をいろいろと聞いているうちに、夫婦は教えてもらって縁起のいい言葉を全部つければいいんじゃないかと考えた結果、長い名前になったというストーリーとなっています。

ちなみに和尚さんが新しい言葉を紹介してその意味を解説する度、旦那さんの方が感心します。
そして「他にはありますか?」と次の名前候補となる縁起のいい言葉を振ります。

最終的には和尚さんもネタ切れになってしまいます。
ですから最後の方はかなりいい加減なものも含まれているようですよ。

寿限無くんのフルネームは?

「ジュゲムジュゲム」はよく知られていますが、実はその先もあります。
ちなみにフルネームは以下の通りです。

寿限無 寿限無 五劫のすりきれ 海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに住むところ 藪柑子の藪柑子 パイポパイポ パイポのシューリンガン シューリンガンのクーリンダイ クーリンダイのポンポコナーのポンポコピーの 長久命の長助
(じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ くうねるところにすむところ やぶらこうじのやぶこうじ ぱいぽぱいぽ ぱいぽのしゅーりんがん しゅーりんがんのくーりんだい くーりんだいのぽんぽこなーのぽんぽこぴーの ちょうくめいのちょうすけ)
です。
・・・長すぎますね。

この長い名前が落語のオチ

この長い名前が、落語のオチにもなっています。
バリエーションはいくつかあるのですが、主流になっているのは寿限無くんが近所の子供と喧嘩する話です。

とっくみあいの喧嘩になり、近所の子は頭にこぶができてしまいます。
すると、こぶができた子は寿限無くんの親に文句を言いに来ます。

その時、やり取りの中で相手の子が「寿限無 寿限無 五劫のすりきれ・・・」と名前を言っているとあまりにも寿限無くんの名前が長いので、こぶが引っ込んじゃったよと言う、それがオチとなって締めくくりとなっています。

ジュゲムジュゲムの言葉の意味をそれぞれ解説!

「ジュゲムジュゲム」とはなんのこと?落語に出てくる長い名前「寿限無」の意味を解説
(画像=『FUNDO』より 引用)

前述のように、寿限無くんのフルネームは非常に長いです。
しかし、お坊さんに付けてもらったというその名前はきちんとした意味があります。

どれがひとつの言葉か分かりにくいものもあるますから、言葉と意味を合わせてみていきますね。

寿限無

これは寿限り無しの意味です。
つまりおめでたいことがずっと続くという意味合いですね。

五劫の擦り切れ

五劫とは、一劫がもとになっています。

一劫とは天女が下界に降りてきて、岩を衣で撫でます。
これを繰り返すといつか岩も擦り減ってついには無くなります。
この状態を指すのが一劫です。

ちなみに天女が地上に降りてきて岩を衣で撫でるのは100年に1度の頻度です。
それを5回繰り返すことで五劫となります。

何億年単位という途方もない時間が必要になるので、果てしない時間、つまり「永遠」という意味合いとなっています。

海砂利水魚

海底の砂利に水中に棲む魚は数え尽くせないほどいるというたとえで「無限」をあらわしています。

水行末・雲来末・風来末

水と雲、風の行く末という意味です。
いずれも果てしなく続くものです。

喰う寝る処に住む処

衣食住を意味していて、人間はどれか一つ欠けても生きていけないので、いずれにも困らず生きていくことを願った言葉となります。

藪ら柑子の藪柑子

藪ら柑子とは正月の縁起物とされ、十両ともよばれる木の事です。
丈夫で春に若葉が芽生え、夏に花が咲き、秋に実を結び、冬は赤き色を添えて霜をしのぎます。

パイポ、シューリンガン、グーリンダイ、ポンポコピー、ポンポコナ

これは架空の国、パイポ王国の長寿だったとされる歴代の王の名前とも、シューリンガン王と王妃グーリンダイの間に生まれ長い気をした2人の娘、ポンポコピー姫とポンポコナ姫の事ともいわれています。
長寿の代表として出された名前とされています。

長久命

古代中国において老子に書かれている一文「天長地久」を出典とした言葉とされています。
天地といった自然のものは絶対にして、永く発展していくという文面の中で出てきます。

また、文字通り長く久しく生きるという長生きを意味する言葉ともされます。

長助

長助には長く助けるという意味がありますね。

ジュゲムジュゲムには様々なバリエーションがある

ここまで解説してきた寿限無はあくまで代表的な物で、他にもバリエーションは存在します。
例えば「藪ら柑子の藪柑子」を「やぶら小路の藪柑子」という風に表現されることなどがあります。