欧州諸国、独自路線に踏み出すのか

筆者が注目したのは、この爆破計画がロシアのウクライナ侵攻の半年前(2021年9月)から検討されていたことだ。この時点でノルドストリーム2の建設工事は完成しており、稼働が開始すれば、ドイツのロシア産天然ガスの依存度はさらに高まる状況にあった。ハーシュ氏によれば、これを懸念したバイデン政権は、冬を迎えるドイツが苦境に陥ることを承知の上でロシアからの天然ガスの供給を途絶させることを画策したという。これが事実だとすれば、同盟国に対する明確な背信行為だといわざるを得ない。

今冬の欧州は幸いにも暖冬に恵まれたが、ロシアからの安価な天然ガスが確保できなくなったことのダメージは計り知れない。昨年のロシアのパイプラインを経由した欧州向けの天然ガスの輸出量は前年比45%減の1009億立法メートルとなり、ソ連崩壊後の最低水準(1995年の1174億立法メートル)を下回った。ドイツの産業界が今年支払うエネルギーコストは2021年から約40%も高騰する見通しだ。安価なロシア産天然ガスを活用して高成長を遂げてきたドイツ経済の競争力が大きく毀損する可能性が高まっている。欧州諸国のエネルギー危機対策は8550億ドルに上り、各国の財政を圧迫している。欧州のエネルギー安全保障は危うくなるばかりだ。ハーシュ氏の報道が契機となって、欧州諸国が独自路線に踏み出すことに期待したい。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

提供元・Business Journal

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