日本自動車工業会(自工会)が10月26日から11月5日まで東京ビッグサイトで開催する『Japan Mobility Show 2023(ジャパンモビリティショー)』で、自工会の豊田章男会長(トヨタ自動車会長)のメンツを保つために、なりふり構わない来場者集めに走っている。ジャパンモビリティショーは隔年で開催されてきた『東京モーターショー』の名称を変更したもので、前回予定されていた2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響から開催が見送られた。自工会がショーの名称を変更したのは、自動車のスマホ化や「空飛ぶクルマ」、小型モビリティなどの登場で、自動車産業を取り巻く環境が大きく変化していることから、自動車業界の枠を超えて他産業やスタートアップ企業にも門戸を拓(ひら)くためだ。

 自工会は、豊田会長が主導して昨年6月に経団連に設置した組織「モビリティ委員会」などを通じて、自動車や二輪車などの自動車関連企業以外でモーターショー出展経験のない企業にも出展を強く要請してきた。トヨタと取引のある、モビリティにはほとんど関係のない多くの企業も出展を決めた。ある自動車メーカー関係者によると、取引のある企業のリストをトヨタの担当者から渡され、必ず出展させるように迫られたという。また、スタートアップをメインに据えるコーナーを設けることから「トヨタをはじめとする自動車メーカーと関係を持ちたいなら出展するようにベンチャー企業に迫っていた」という。

 これら強引な出展企業集めによって、出展企業数はスタートアップや異業種など177社を含めて過去最高となる475社が出展することが決まった。そのなかにはモビリティにほぼ関係がなかったり、関係あったとしても「モビリティ目当てで来場する人がまったく興味を持つとは思えない業種の企業も出展する」(自動車メーカー関係者)予定だ。

来場者数130万人のカラクリ

 自工会とトヨタがここまでジャパンモビリティショーの盛り上げに力を入れるのは、会長である豊田氏の顔を潰さないためだ。モーターショーは「若者のクルマ離れ」もあって、中国を除いて世界的に退潮している。日系自動車メーカーも欧米で開催されるモーターショーへの出展を見送るケースが増えている。世界最大の自動車市場である中国のショーだけは、先進国の自動車メーカーも多くが出展しており、注目も高い。

 かつては世界3大ショーの一角だった東京モーターショーも欧米自動車メーカーが出展しないケースが増え、来場人数の減少が続いていた。ところが前回2019年の東京モーターショーでは豊田会長が来場者数100万人という高い目標を掲げ、結果的に来場者数130万人を達成した。しかし、ここにはカラクリがある。東京・お台場で開催した前回のモーターショーは会場が2カ所に分かれた。関係者によると「会場を結ぶ公道を歩いている観光客などもすべて来場者に含めた」としている。自工会では来場者数は公表したが、有料チケットの販売枚数は非公開だ。

「実売ベースで70万枚程度だったと聞いている。欧州のモーターショー主催者から『どうやってそんなに来場者を増やしたのか?』と聞かれて返事に困った」(関係者)