キオクシア赤字の背景

 かりに経営統合が破談になった場合、キオクシアの経営は転げ落ちていくのだろうか。キオクシアの23年4~6月期連結決算で純利益は1031億円の赤字だった。過去最大の赤字を記録し、早期退職の募集にも着手する。

「ただ、この決算数字はキオクシアの経営に問題にあるからではない」

 津田氏が業績悪化の要因に指摘するのは市況である。

「コロナ禍でスマートフォンが多くの消費者に行きわたり、新規購入需要が低下して、買い替え需要に転化し、需要全体が低下した。スマホメーカーは二重三重に半導体の発注をかけていたが、需要低下によって過剰在庫が発生し、納入単価が大幅に下がって業績は悪化した」

 同様の影響は他の半導体メーカーも受けており、SKハイニックス、サムスン電子、マイクロンテクノロジーなども赤字を出した。市況が回復すればキオクシアの業績回復も考えられるという。

「今が業績の底で、景気拡大にともない今年度の第4四半期から来年度の第1四半期にかけて半導体の価格が上昇する見通しなので、キオクシアの業績も回復するだろう。WDとの経営統合が破談になれば、新たな統合先を探すのではなく、単独で経営していくという判断もあり得る」(同)

 懸念されるのは経営力である。端的にいえば経営者の質で、総じて日本の製造業の経営者が米国企業に比べると見劣りするのは否めない。津田氏は説明する。

「日本の総合電機メーカー全体にいえることだが、経営者が弱い。社員として昇進を重ねた末に社長に就任しているだけで、経営専門の人材とは異なる。米国では菓子メーカーのRJRナビスコCEOのルイス・ガードナーがIBMのCEOに就任するというように、プロの経営者を招へいしている。日本で高く評価された総合電機メーカー社長もいるが、不採算事業の整理で利益率を向上させただけで、売上高は伸ばしていない。成長戦略を策定して自社を発展させたとはいえない」

 日本ではプロ経営者がクローズアップされた時期もあるが、言葉の先行にとどまった。当時、プロ経営者と呼ばれた何人かは「経営者は経営のプロであるべきなのだから、プロ経営者という言葉には違和感を持つ。メディアにプロ経営者として取り上げられるのも軽薄な感じがして好まない」と語っていた。キオクシアとWDが統合した場合、社長にはキオクシア側が就任すると伝えられているが、この人事も統合の効果を大きく左右しそうだ。

(文=Business Journal編集部、協力=津田建二/国際技術ジャーナリスト)

提供元・Business Journal

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