ドイツ民間ニュース専門局ntvのウェブサイトには、「なぜ西側政治家はキーウを訪問し、そして今度はイスラエルを競って訪問するのか」という興味深いテーマの記事を掲載していた。ドイツのショルツ首相をトップに、バイデン米大統領、EU委員長、スナク英首相、フランスのマクロン大統領などの欧米首脳が次々とイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と会談している。ちなみに、オーストリアのネハンマー首相は25日、イスラエルを訪問する。
ロシア軍のウクライナ侵略以来(2022年2月24日)、世界のメディアの注目はウクライナに集まったが、10月7日のハマスのテロ奇襲以来、メディアは今度はパレスチナ問題に集中、ウクライナ戦争は忘れ去られたような感がするほどだ。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、「国難に遭遇するイスラエルを訪問し、イスラエルが孤立していないこと、同盟国が支援していることを直接伝達することは、重要な貢献だ。戦時下の国にとって他国の連帯表明は心強い」と説明し、欧米首脳のイスラエル詣でに理解を示している。
キーウ訪問では、西側政治家は軍事大国ロシアに主権を蹂躙されたウクライナへの連帯表明が第1の訪問目的だったが、戦争が長期化するにつれ、武器供与が大きなテーマとなった。ドイツは軍用ヘルメットから主力戦車の供与までウクライナのゼレンスキー大統領と会談する度に、新たな武器を供与してきた。
イスラエル訪問の場合、武器の供与はテーマではない。ハマスのテロ奇襲で揺れるイスラエル国民に連帯表明して激励することが最重要となるわけだ。ただし、その前にイスラエル軍のガザ地区への報復攻撃をどのように評価するか、という難問をクリアしなければならない。
建国以来イスラエルを支援してきた米国はイスラエルを全面的に支援する一方、ガザ報復で多くのパレスチナ人が犠牲となる事態は避けたい。そこでイスラエル側に人質が完全に解放されるまでガザへの地上軍の侵攻を延長すべきだという立場を取り出してきている。
EUの場合、イスラエルのガザ報復攻撃をドイツのように全面支持するか、スぺインのように人道的停戦を要求するかで、コンセンサスが依然出来ていないのだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?