“飽くなき挑戦”の象徴であるロータリーエンジンとスポーツカー搭載への期待
さて、マツダはロータリーエンジン復活をこの8Cだけに留めてよしとしているのだろうか?もちろん、そうではないだろう。マツダの技術者はもとより、多くのクルマ好きにとっても、ロータリーエンジンに求めるのは、やはりRX-VISIONのようなスポーツカーに搭載されること。そんな“夢”への期待がかかるこの8C誕生には、未来のロータリーエンジン搭載車を新たに生み出していくという役割があるのではないかと思う。

マツダはすでに高いエンジン効率を達成しているSKYACTIV-G/D/Xを持っている。企業としてもさまざまな制約がある中、新規のロータリーエンジンを開発するという決定は、ロータリーエンジンがマツダの象徴であるということや、技術者の挑戦心、さらには夢やロマンということだけで成立するわけもない。
マツダが今後電動化を推し進めるうえで、マツダの自動車づくりのフィロソフィーや総合的な視点で見ても、シリーズ式PHEV用エンジンとしてロータリーエンジンを用いることは、彼らにとって理にかなっている選択肢だったのだ。そして、それがロータリーエンジン開発を今後も続ける大義名分にもなるはずだ。

マツダは、彼ら自身が想い描く形の“ロータリーエンジンがある世界”を創るためにも、まずはこの8Cで先人からいまに継承する知恵と新たな開発技術の融合によって、徹底的に突き詰めた”発電用ロータリーエンジン”の開発と、工場設備の確立、そして実際に市場導入を通じて、未来に続けるためのロータリーエンジン進化の道を作り上げたのだ。
これからも続いていく、マツダの”飽くなき挑戦”と”夢とロマン””
現在はカーボンニュートラルが世界共通の大命題として声高に叫ばれ、自動車メーカーは年々厳しくなる環境対策が求められている。マツダもその対応に追われているのが現実で、その中にあって、ファンならびに技術者の”夢とロマン”でもある、専用開発されたロータリーエンジン搭載の新たなスポーツカーを世に出すことなど、いかに困難なことかは容易に想像がつく。
ただし、そこでひとつキーポイントになるのは、ガソリンに代わる新たな燃料かもしれない。ロータリーエンジンのメリットのひとつは、多種多様な燃料への対応力の高さである。これから先、水素やカーボンニュートラル燃料などが普及すれば、もしかしたらロータリーエンジン搭載のスポーツカー復活のハードルが下がるかもしれない。

たとえば、仮に水素がメインになるような時代が到来したら、構造上ロータリーエンジンの優位性は大いにある。(とはいえ、燃費効率や大きく重い水素タンクの問題はあるのだが…)
いずれにせよ、将来が予測不可能ないま、いつか来るかもしれない“その時”のためにも、マツダとしてはロータリーエンジンの進化を止めるわけにいかない。進化を止めたものを取り返すにはかなりの時間を要し、ここぞという時を逃してしまうからだ。
マツダは2030年に向けて販売する自動車の電動化を進め、EV比率を増やしていくという経営戦略を明らかにしている。今後e-SKYACTIV R-EVは電動化の中枢を担い、今回のMX-30だけでなくマツダのスモール群の車両に順次搭載されていくことが予想される。現在、MX-30・e-SKYACTIV R-EVは日本と欧州のみの販売であるが、搭載車種が増えていけば、ロータリーエンジンの人気が高くファンも多い北米やオーストラリアの市場導入もぜひ検討していただきたい。
今回、マツダがもつ技術、知見を集約し、さらにロータリーエンジンへの誇りを持って8Cを僕らの前に送り出してくれた。この新型ロータリーエンジン8Cに込められたマツダすべての人の想いは、未来のロータリーエンジンの進化への”飽くなき挑戦”に繋がることとなるだろう。
