言葉は知らなくとも、日本では多くがハームリダクションを実践
調査対象の全員に「たばこハームリダクション」という言葉について尋ねたところ、「言葉を知っており内容も理解している」が6.4%、「言葉は知っているが内容は理解していない」が6.8%、「言葉も内容も知らない」が86.8%と、「たばこハームリダクション」という言葉に対する理解は残念ながら進んでいないという結果であった。
だが、前述のように、加熱式たばこに切り替えた理由に、健康への配慮や周囲のへの配慮を挙げている人が多くを占めることから、言葉自体は知らなくとも、ハームリダクションと同様の行為を強く意識し、すでに実践していることが分かる。
実際、日本における紙巻たばこの消費量は16年からの5年間で40%以上も下がったという。日本たばこ協会が発表した22年4~12月の国内のたばこ販売数量から加熱式の割合を試算(1箱を紙巻き20本分に換算)すると、すでに4割近くに達している。
たばこハームリダクションの潮流に水を差しかねない加熱式たばこへの増税
これまで述べてきた「たばこハームリダクション」という潮流に水を差しかねない自体が今、進行しようとしている。それは防衛費財源の確保を目的とした、たばこ税の増税だ。
政府は具体策を年末の税制改正議論で決める見通しで、しかも増税案では加熱式たばこの税率を現行の紙巻きたばこと同率にまで引き上げることが検討されている。
たばこの価格のうち国税、地方税を合わせて消費税を含めると、紙巻たばこでは60%以上が税金だ。加熱式たばこは、当初、パイプたばこに区分されていたが、18年度の税制改正で加熱式たばこの区分が新設され、段階的に引き上げられてきた。加熱式たばこは1本の数え方が違うため、紙巻きたばこよりも税率が抑えられているが、その税差はわずか10~20%程度だ。
一方、ハームリダクションを強く推進する英国では紙巻きたばことの税差は70%を超える。EU加盟の国々でも紙巻きたばこを100として比較した加熱式たばこの税率は、伊国で30%、仏国で59%など低く、EU全体での税率を見ても37%であった。
BCNの調査でも、紙巻たばこと加熱式たばこで税率が異なることについて質問しているが、「知らない」が77.3%を占めた。また海外では、たばこハームリダクションの考えに基づき、両者の税率が異なる国があることについても質問したが、「知らない」が90.9%を占めていた。
加熱式たばこへの増税は、こうした知らない人が多いことに付け込み、取り易いところから取ろうというとても安易な策であり、場合によっては、健康リスクを低減できる加熱式への切り替えにブレーキを掛けかねない動きとして懸念する声も多く上がっている。
新時代戦略研究所(INES)は6月22日、「国民の健康とハームリダクションを考える研究会」の設立を発表した。研究所では、政府が推進する健康長寿社会の実現を目指す観点から、加熱式たばこの税率を現行の紙巻きたばこと同率まで引き上げることが、近年喫煙者の間で急速に進んでいる、紙巻きたばこから加熱式たばこへの移行が停滞し、結果として海外で普及している「紙巻きたばこより有害物質暴露の少ない加熱式たばこや、害の少ない電子たばこなどへの移行」を促すハームリダクションの考え方とは逆行すること、そして再び受動喫煙、健康被害のリスクが高まることを懸念するとの声明を出した。加えて、たばこハームリダクションの法制化、紙巻きたばこと加熱式たばこの税率差の維持・拡大などを提言している。
また、自民党の「国民の健康を考えるハームリダクション議員連盟」も6月に、たばこ税増税に関して、国民の健康増進の観点からたばこ税制をとらえることが重要として、加熱式たばこを紙巻きたばこよりも優遇するよう要望する提言書を厚生労働大臣と財務大臣に提出している。
加熱式たばこは紙巻きたばこに比べ、喫煙者本人、周囲の人々、社会や環境に対する影響の抑制にもつながる。加熱式たばこへの増税は、ハームリダクションの考え方に水を差す行為であり、国民全体の利益にもつながらないといえよう。日本が国民の健康増進を目指すのであれば、むしろハームリダクションの考え方を積極的に取り入れていく必要があるだろう。公衆衛生や社会的問題を解決するための、ベターな施策として活用すべきではないだろうか。
提供元・BCN+R
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