証明された2ボランチの修正力
札幌は[4-4-2]に近い布陣で、横浜FMの攻撃に対抗。ホームチームが自陣後方からパスを回そうとするやいなや、スパチョークと駒井善成の両MF(2ボランチ)もハイプレスに加わる。この2人が横浜FMの2ボランチ、渡辺皓太と山根陸の両MFを捕捉していた。
基本布陣[4-2-1-3]の横浜FMは渡辺と山根のどちらかを最終ライン付近へ降ろす形で札幌のハイプレスを掻い潜ろうとしたが、この2人が相手の2トップの手前にポジションをとることが多く、守備のファーストラインを効率良く越えられない場面がちらほら。言い換えれば、特に前半は札幌の2トップの斜め後ろに立ち続け、GK一森や2センターバックからのパスコースを確保するシーンが少なかった。
後半から渡辺と山根が札幌の2トップの斜め後ろに立つ場面が増え、横浜FMはパス回しのリズムを掴んでいる。この2人の立ち位置の修正力の高さが証明された試合でもあった。次節以降も、この2人のポジショニングが横浜FMの浮沈の鍵を握るだろう。
劣勢のなか生まれた狙い通りの攻撃
「限られたメンバーで、本当に一丸となって戦う姿勢を見せてくれました。ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)が率いる札幌は本当に倒すのが難しいです。ボールを持っているときも持っていないときも、私たちは集中を切らさずにやらなければいけないと思います。少しでも切らしてしまえば、相手の良さが出てしまい難しい状況に追い込まれます。相手は攻撃に入ったときの強さがあります」
「先制点の場面は私たちが焦れることなくしっかりと守り、奪った瞬間に1本目のパスを繋いだ。これは日頃から言っていることですが、大事なのは1本目のパスを確実に繋ぐ。そして相手は前がかりになっているので裏のスペースを狙っていく。そこが狙いです。奪った後の繋ぐところで、私たちはなかなか繋げずに少し難しい状況になることもありました。1点目はしっかり私たちがボールを奪い、前線の選手に繋いでいくことにより宮市のゴールが生まれました」
マスカット監督が試合後の会見で語った通り、札幌に攻め込まれていたなかで自陣からの速攻を結実させたことは、横浜FMにポジティブなムードをもたらした。直近の公式戦では、相手最終ラインの背後を狙う姿勢が不足している感が否めなかったが、優勝戦線に生き残るための重要な試合でこれを体現できたのは収穫と言えるだろう。これも今節の勝因の一つだ。
「ロペスから(のパスは)練習のなかで何度かあるシーンだったので、本当に練習通りの形が出た」と、先制ゴールを挙げた宮市も試合後の囲み取材で満足感を示している。ロペスのパスを予測していた点も然ることながら、十分な助走からトップスピードに到達し、対面の札幌DF田中駿汰を振り切ったのも秀逸だった。