信じる相手を間違えてはいけない
筆者が記事や動画を出していて時々言われることがある。それは「他の人は誰も信じられなかったけど、あなただけは信じられる。あなたのいうことはすべて信じる」という趣旨の話だ。
もちろん、このように言われて悪い気分はしない。疑い深い人から全幅の信頼を寄せられるのはそれだけ自分に信用があったということである。だが、正直にいってこうした思考は危険だと思っている。もしも筆者が巧妙に相手から信頼を得ることに熟知している人物で、信頼構築の段階からすべてが計算づくという場合、このようなタイプを騙すことは極めて簡単だからだ(自分はそんな愚かで割に合わないことはしないが)。
なぜ他の人は疑うのに特定の人を信じてしまうのか?これはあくまで仮説の域を出ないが、疑い深い人もイチイチコミュニケーションコストが高いので人間関係に疲弊していると考えることができる。彼らの人間関係は「この相手は信用できないが、あの相手は疑う必要がない」と疑う、疑わないリストを持っている。自分なりの判断基準を持っていて、信用に足る相手と交流するというものである。だが、彼らそのリストには合理性、論理的判断基準はなく、あくまで主観的な判断に過ぎない。そのため、人心掌握術に長けた人物にそこをハックされればコロリとやられる。
その逆に騙されにくい人の特徴はこの対局の感覚を持っている。すなわち、主観的な判断ではなく、論理的、合理性に裏打ちされたものだ。たとえば魅力的なオファーを持った相手がアプローチして来た場合、疑い深い人はその相手の「人となり」を見て、信用できるかどうかを考える。だが、論理的な人は「わざわざ営業コストをかけ、顧客にしかメリットのない提案をすることなど利潤追求企業がやるわけがない」という冷静で合理的な判断をする。どれだけいい人を装って、優しく誠実なオーラが出ていても、自分に得のない行動をする人間は存在しない。この真理を抑えているので決して騙されないのだ。
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疑い深く、自分は大丈夫と思っている人ほど実はいいカモになってしまう。「自分はしっかりしている」と思っているが、その思考根拠は感情的、衝動的な揺さぶりには極めて脆弱であり、プロにかかれば簡単に籠絡される。「騙されないぞ!」という構える思考こそが足元をすくわれる原因なのだ。
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