黒坂岳央です。

最近、いろんな営業マンが出している書籍や動画を見て勉強する中で興味深い話があった。それは「疑い深い人ほど実は騙されやすい」という主張を多く見たことである。また、筆者の地元の市役所が出している冊子にも「詐欺被害にあう高齢者が共通しているのは”自分は騙されない”と思っているタイプ」だと注意喚起をしている。

これは国家の統計データなどで見える化できない指数であるため、あくまで個人的体感に過ぎないが筆者もこれと同じ感覚を持っている。詐欺の被害にあってあーだこーだと騒いでいる人は大抵、普段からSNSなどで物事を否定的に見る投稿をしているものである。だが、そういう人ほどコロッと騙される。疑い深いはずなのになぜだろう?

独断と偏見でこの直感と反する理由を考察したい。

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自己評価の高さで失敗する

件の営業マンの主張によると、新人営業マンが最も敬遠するのが「疑い深いお客」だそうだ。彼らは何を提案してもすべて否定から入る。

「このシステムは本当にカタログ値が出るのですか?大丈夫ですか?」 「本当は売れていないのでは?」 「あなたを信用して本当に大丈夫ですか?100%保証しますか?」

とにかく疑り深く、コミュニケーションコストが高いために営業マンは対応に疲れてしまうそうだ。「本来はそんな部分を疑っても意味がないでしょう」という部分にまでとにかく徹頭徹尾疑い続ける。

だが、ベテラン営業マンが与し易い相手こそ、実はこの手の疑い深いお客なのだという。彼らは提案の常に裏側を考えるので営業マンサイドに都合の悪いことを彼らにあえて否定させて、目論見通り売りたいものを買わせるというテクニックがあるのだという。彼らは自分の否定力に自信を持っているため、一度自分が否定したことはもう疑わない。自分は相手を出し抜いてやったと喜んでいるが、内心笑っているのは実は営業マンの方なのだ。

疑い深い人は「損をしたくない!騙されないぞ!」とガードをガチガチに固めており、そのことが彼らの判断基準から論理的、大局的視野を奪い取って強固な思い込みに自らハマっている。つまり、「自分は騙されないぞ」という自己評価の高さが逆に騙される理由になっているということなのだ。特に情報の非対称性の高いプロダクトの場合は事実の裏取りが難しく、自分が騙されていることに気づくことすらできない。