戦争が長期化し、欧米諸国ではウクライナ支援への疲れが見られるようになった。だからこそ、ウクライナがなぜロシア軍と戦っているのかを繰り返しアピールしなければ、軍事支援や人道支援はいつかは途絶える。ウクライナ戦争により欧米諸国の国民の生活にもエネルギー価格の上昇や物価の高騰などさまざまなマイナスが生じているからである。
イスラエルとウクライナのPR活動は似ているが、イスラエルの場合、欧米諸国からの軍事支援や人道支援のためではない。イスラエル軍の報復作戦に対する外部からの批判を避けるためだ。そのために「なぜ、イスラエル軍は戦うのか」という“大義”を鮮明に訴えるために、音楽祭の現場やギブツの悲惨な状況を公開するわけだ。決して容易なことではない。多くのイスラエル人にとってそれらのシーンはトラウマとなっているからだ。
もちろん、ガザ地区のハマスもイスラエル軍の報復攻撃で苦しむパレスチナ人の困難をできるだけ大げさに報じ、イスラエルの軍事攻撃に対して国際社会からの批判の声を高める作戦を取るだろう。電気、水、食糧などが不足する中で、イスラエル軍の攻撃を受けて苦しむパレスチナ人の姿はハマスにとって絶好の隠れ蓑となるからだ。
イスラエル軍はハマスとの戦闘に勝利するだけではなく、ガザ地区への報復攻撃で苦しむパレスチナの女性や子供たちの状況にも対処しなければならない。イスラエル軍は「ハマス」と「国際社会の批判」に対し、両面作戦を展開しているわけだ。イスラエルにとっては前者よりも後者との戦いがより難しいだろう。
ガザ地区のパレスチナ住民は自身の困窮の原因がイスラエルにあるのではなく、ハマスにあることをはっきりと理解する必要がある。ハマスがパレスチナ人を苦境に追い込んでいるのだ。ガザ地区北部から南部への退避要請を「イスラエルのプロパガンダ」としてパレスチナ人の避難を阻んでいるのは「ハマス」である。ハマスにとって、パレスチナ人の安全は自身の盾以上の価値はないのだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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