パレスチナのイスラム過激派テロ組織「ハマス」のテロ攻撃を受け、イスラエル軍はガザ地区に軍事侵攻し、ハマス撲滅に乗り出す予定で、ガザへの境界線周辺には戦車や装甲車などが待機中だ。イスラエル軍の大規模な報復攻撃がいつ始まってもおかしくない状況だ。

イスラエル南部、イスラエルとガザの国境近くを走るイスラエルの軍用車両(2023年10月15日、英字新聞「エルサレム・ポスト」から)
予想される通り、イスラエル軍のガザ侵攻が開始されれば、ハマス関係者ばかりか、パレスチナ住民にも多くの犠牲が出るであろう。そのため、バイデン米政権や欧州諸国はイスラエルに慎重な対応を求めている。言い換えると、軍事的に圧倒的に優位なイスラエル軍の攻撃を受け、多数の死者が出る可能性が高まることで、必ずイスラエル批判の声が強まることを警戒しているわけだ。
その一方で、ドイツのハベック副首相(経済相兼任)は動画を公表し、そこでハマスのテロを厳しく批判する一方、イスラエルに対して、「ドイツは常にイスラエル側を支援する。その連帯には制限がない」と強調し、「ハマスのテロで多くのイスラエル人が犠牲となった。にもかかわらず、ドイツ国内で親ハマスのデモ集会が開催されることは絶対に許されない」と指摘し、ドイツ国内では反イスラエル、親ハマスのデモ集会に参加する者は処罰されるべきだと述べている。ハベック副首相はイスラエル支援を「ドイツの義務」と呼んでいる。
同動画を放映していたドイツ民間ニュース専門局ntvを見ていたとき、ハマスのテロに激怒した人々のイスラエル支持がいつまで続くだろうか、といった思いが湧いてきた。ガザ地区でのパレスチナ人、特に、女性や子供たちが苦しむ様子が映像で伝えられれば、ハベック副首相のように、イスラエルに対し「無制限の支持」を続けることができるだろうか。
興味深い点は、イスラエルがガザ地区攻撃の開始を数回延期し、ガザ地区北部のパレスチナ人に南部に避難するよう呼びかけている一方で、「なぜイスラエル軍はハマスへの報復攻撃を行うのか」を明確にするため、ハマスのテロで生き延びた音楽祭に参加していた若者たちやキブツ(集団農園)関係者の証言を積極的にメディアに公開していることだ。
ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア軍の戦争犯罪の拠点である、キーウ近郊のブチャに欧米諸国からの訪問者を案内するようにしており、ロシア軍の蛮行を見せている。なぜなら、ウクライナを訪れた政治家たちにブチャの虐殺現場を見せ、ウクライナ戦争でのロシアの戦争犯罪を忘れさせないためだ。